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信用保証協会では、「中小企業の会計に関する指針」(会計指針)にもとづき決算書を作成し、それを税理士や公認会計士が確認している中小企業を対象に、基本になる保証料率よりも0.1%割引する優遇扱いをしています。この0.1%という保証料率の優遇は、保証協会に担保を入れて保証を受ける企業と同じ料率優遇なわけですから、会計指針普及に向けた意気込みの強さがわかります。
会計指針は、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所、企業会計基準委員会の4団体が中小企業にとって望ましい会計のあり方を示したものです。会計指針の普及を促進すべきなのは、「中小企業の体質強化を図るためには、まずは財務内容の整備が必須である」と考えられているからです。会計指針は、まさに財務内容の整備の基準であり、企業会計の情報開示の第一歩になるものです。情報開示によって、取引銀行や取引先企業からの評価は格段に高まります。そのためにはどこの企業でも最低限準拠している会計の基準があることが必要なのです。
従来から中小企業には、3つの決算書があるといわれていました。1つは「税務署用の決算書」であり、収益を目一杯抑えこんだもの。2つ目は「銀行用の決算書」で、これは逆に収益を思い切り引き上げたものが多いようです。3つ目は「取引先用の決算書」で、これは仕入先の値引きや販売先への値上げを狙うときは収益を抑え、信用力を誇示するときは収益を上げるものになっています。
しかし、このようなことは、今後は通用しなくなります。ホリエモンの粉飾決算に強烈な批判をしていた中小企業の経営者のなかにも、こうした複数の決算書を作っている社長が少なからずいると思います。しかしこれは、やはり粉飾決算のひとつに違いありません。最近、国会を通過した「金融商品取引法」「日本版SOX法」はホリエモンを逮捕に追い込んだ証券取引法を組み込んだ法律であり、今後は中小企業であろうとも、複数の決算書すなわち粉飾の決算書に対する批判はますます大きくなると思われます。その点、会計指針に準拠した決算書は、実に信頼され安心できるものであり、着実に広がっていくはずです。
中小に影響を与える信用保証協会
これまで信用保証協会は中小企業の経営に極めて大きな影響を与えてきました。例えば、ほとんどの中小企業が3〜5ヵ年の中期経営計画を策定するようになったのも、信用保証協会の働きかけが大きかったといえます。北海道拓殖銀行や山一證券が倒産し、中小企業が銀行の貸渋り・貸剥がしで苦しんでいたときに、政府主導で保証協会の「安定化特別保証」が実施され、これによって多くの中小企業が救われました。しかしその5年後には返済できない企業が続出したため、保証協会は借換保証制度を作り、その利用条件に事業計画(中長期計画)の提出を義務付けました。それによって中長期計画を作るという習慣が中小企業に根付いていったのです。
信用保証協会の条件になると、これが中小企業に大きな影響を与え、借入の標準条件になるのは間違いありません。会計指針が信用保証協会の保証条件になったということは、今後の中小企業の行動を恒常的に変えるものになるということです。そのためにも、早期に会計指針を習得することをお勧めします。
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