Q&A経営相談室
【マネジメント】
社員に読書の習慣を身に付けさせるには
 
Q:
 社員に読書の習慣を身に付けさせたいと考えています。うまい方法があったら教えてください。 (衣料品製造)
 

<回答者>トーマツ環境品質研究所 白潟敏朗

A:
 社員に読書の習慣を身に付けさせるには、2つの方法があります。1つは、トップダウンで強制的に読ませる方法、もう1つは社員が自発的に読書をする方法です。会社の風土によっても異なると思いますが、理想は後者の方法でしょう。
 そこで、当社が開発した『シンプルしかけ』を紹介します。『シンプルしかけ』とは、「かんたん実行」「ばつぐん効果」「らくらく継続」の3つの条件を満たしたしかけです。誰だって「難しそうだなあ」というものには手を出しづらいものです。逆に簡単なものなら「ちょっとやってみようか」という気持ちになります。「かんたん」は社員を動かすときの大事なキーワードです。実行が簡単でも効果がないとダメなので、「ばつぐん効果」も外せない条件になります。そして、続けるのが大変ではないしかけこそが社内に浸透すると考えて、「らくらく継続」という条件をつけました。
 社員が自発的に読書をするためには、次の流れが自然にできることがポイントです。1.『本っていいなあと思う』→2.『自分で本を読む』→3.『本の良さを人に伝える』→4.『伝えた人に喜んでもらう』。この流れを『シンプルしかけ』を活用して実現します。
 まずは、しかけその1『偉大な人に学ぼう会』です。定期的に、偉大な人が書いた本をみんなで学ぶ会です。

◆開催頻度・時間
 月に1回から2回、時間を決めて実施します。できれば、始業時間前の1〜2時間がお勧めです。

◆講師・参加者
 最初は講師が社長、参加者は管理職を推奨します。管理職が読書するようになったら講師が管理職、参加者は部下の一般社員がいいでしょう。

◆本
 偉大な人が書いた本であればなんでもいいと思います。たとえば故ドラッカー氏が書かれた『マネジメント』や『仕事の哲学』(ダイヤモンド社)などはお勧めです。

◆進め方
 事前に参加者に本を読んできてもらいます。そして、学ぼう会で全員が「素朴な疑問」、「感激したこと・目から鱗の話」、「自分の仕事にいかせること」などを語ります。その語りを踏まえ全員で意見交換をし、最後に講師である社長がまとめます。みんなが『本っていいなあ』と感じることができれば成功です。
 いかがですか。なるほどなと思われた方は、早速『偉大な人に学ぼう会』をやってみてください。参加者は、本の良さが段々とわかってきますので、自分から本を読むようになります。

朝礼で本の感想を発表

 続いて、しかけその2は『あふれる教養カード』です。スタンプカードを作成し、読んだ本の数だけスタンプを押します。できれば、社長がスタンプを押してあげると効果ばつぐんです。『この本は読んでどうだった?』などと管理職に聞いてあげれば励みになります。そして、しかけその3は『おすすめ本一覧』です。社長が管理職に読んでもらいたい本の一覧を作成し、配ります。読書をする習慣がついていない方は、読む本を探すのが一苦労です。そこで、『おすすめ本一覧』を配ってあげれば、その苦労はいりません。
 自分で読書をする人が増えてきたら、シンプルしかけその4『この本のここが良かったを語る』に挑戦です。朝礼や部門の会議などで、自分が読んだ本の良かった点や役にたった点を3分程度発表するだけです。人に伝えることで、本から学んだことを忘れないようになります。さらに、伝えた人に喜んでもらえれば、また良い本を読もうという気持ちになりますし、喜んだ人が読書をしたくなります。
 これら4つのシンプルしかけで、社員の読書への関心は格段に高まっていくはずです。

提供:株式会社TKC(2006年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
戻る ▲ ページトップへ戻る