Q&A経営相談室
【資金調達】
信用保証協会「保証料率」変更の影響
 
Q:
 信用保証協会の保証料率が変更されると聞きました。その内容と影響を教えてください。(自動車小売業)
 

<回答者>ファインビット社長 中村 中

A:
 この4月から信用保証の保証料率は、従来の一律料率(無担保の場合、年1.35%)から、いろいろな料率が適用されることになります。中小企業の財務内容に応じた基本料率(0.5〜2.2%の範囲で9段階)に、その企業の定性要因を加味して、料率を決定することになるのです。定性要因とは、決算書に表われない営業力や技術力、経営者の資質などの独自の特徴のことです。これは、保証を申し込む中小企業の総合的な信用力に応じ保証料率を変えるということです。
 一方、保証料を支払う中小企業にとっては、自社の評価が低いものであれば保証料率は引き上げとなってしまい、貸出金利のケースと同様に大きなコスト負担になります。防止策は原則として企業の信用力のアップであり、企業の格付けの引き上げ努力が王道です。格付けが上がれば貸出金利も保証料率も下がり、反対に下がれば貸出金利も保証料率も上がってしまうのです。
 企業が独自に講じる当面の対策は、銀行に対し「信用保証協会の保証は定期預金担保と同様に、企業が万一倒産した場合でも全額を保証協会が代位弁済してくれるのですからリスク率が極めて低い貸出ですね」と切り出すことです。そして、「銀行の貸出金利は最近はそのほとんどがリスク率と聞いています。信用保証協会の保証付貸出は銀行にとってリスク率の極めて低い貸出ですので、当社の貸出金利は極力低く抑えて下さい」と、正々堂々と銀行担当者に伝えてください。
 もともと銀行の貸出金利は、(1)市場金利(2)銀行内コスト率(3)銀行利益率(4)リスク率の4要素の積み上げ合計値で成り立っています。ところがバブル崩壊で不良債権問題がクローズアップされてからは、もっぱら(4)リスク率のみが重視されるようになりました。格付けで金利が上下する「格付け連動型金利」体系に多くの金融機関は移行しましたが、これは正に「リスク率」重視金利のことです。中小企業の多くは銀行員から「格付けが下がったので本部の指示で金利を上げさせてもらいたい。お願いに応じてくれなければ金融庁に叱られます」と言われ、既に金利を引き上げられているかもしれません。
 今回の保証料率引き上げは、銀行の「格付け連動型金利」と同様に「リスク率」に連動するものです。そこで中小企業は信用保証協会の保証料率とその保証を受ける貸出の両方で「リスク率」を負担させられることになるのです。この不合理を防ぐためにも、信用保証協会の保証付貸出については銀行に貸出金利を低く抑えてもらうのが筋であり、当然の権利であると思います。
 なお、今回の保証料率変更にはもうひとつ知らないと損をする改正があります。それは、信用保証協会に保証をして貰うときに必要だった連帯保証の件です。「原則として経営者本人以外の連帯保証人は不要とする」という条件が新たに加えられました。これも金融機関が先行しましたから、一過性のものではなく、今後ずっと続くものです。
 平成16年の民法改正で包括根保証が禁じられ、同年12月の「金融改革プログラム」や17年3月の「地域密着型金融の機能強化アクションプログラム」で「担保・保証に過度に依存しない融資の推進」が公表されました。これを金融庁は金融機関に指導しており、多くの金融機関では、既にキャッシュフロー重視の融資に力点を置くようになり、無担保無保証ローン拡販にもアクセルを踏み込むようになっています。今回、この点を保証協会が保証条件の大きな柱に組み入れました。これらの条件も中小企業には有利な内容ですから、大いに活用されることをお勧めします。

提供:株式会社TKC(2006年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
戻る ▲ ページトップへ戻る