Q&A経営相談室
【労務管理】
パート・アルバイトの就業規則のつくり方
 
Q:
 パート・アルバイト社員向けの就業規則を作りたいと考えています。どんな点に留意すればよいのかお教えください。(食品スーパー)
 
<回答者>社会保険労務士 三留敏明

A:
 労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業主に就業規則の作成を義務づけています。ここでいう「労働者」とは、パート・アルバイト社員や契約社員なども含まれます。就業規則は、労働条件や服務規律などを明確にするものです。就業規則があることで、労使双方が会社の規則や秩序を守り、安心して働ける職場づくりを実現できます。パート・アルバイト社員は、正社員と労働条件が異なるため、就業規則を作成する場合には「適用範囲(事例参照)」を明確にしておくことが必要です。

【適用範囲の事例】

●正社員の就業規則
第○条(適用範囲) この規則は、第○章で定める手続きにより採用された従業員に適用する。ただし、パートタイム、アルバイト及び契約社員の就業に関し必要な事項については、別に定めるところによる。

●パート・アルバイトの就業規則
第○条(目的) この規則は、就業規則第○条の定めるところにより、パートタイム、アルバイトの就業に関し必要な労働条件、服務規律その他の就業に関する事項を定めるものである。

第○条(定義) この規則において、パートタイム、アルバイトとは、第○章の定めにより採用された者で、所定労働時間が1日○時間以内、1週○時間以内又は1か月○時間以内の契約内容で採用された者をいう。

 食品スーパーという業種柄、パート・アルバイト社員の活用は重要な戦略テーマになると思います。従業員に占める非正規従業員(パート・アルバイトなど、正社員以外の従業員)の割合は、年々大きくなっています。これまで正社員が分担してきた役割をパート・アルバイト社員が代行するケースも多くなりました。事情の許す範囲で労働条件の改善を図り、パート・アルバイト社員の戦力を積極的に活用していくことが求められます。

個別事情を考慮し柔軟に対応

 就業規則を作成し、または変更しようとするときは、その事業場において使用する労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、その意見書を添付することが必要です。これに加えて、パートタイム労働法では、パート社員にかかわる事項について新たに作成または変更する場合は、パート社員の過半数を代表する者の意見を聴くように努めることを求めています。過半数を代表する者とは、(1)監督または管理の地位にない者、(2)就業規則の作成等について意見聴取の対象者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等により選出された者です。また、当然に就業規則を労働者に周知しなければなりません。
 パート・アルバイト社員向けの就業規則に記載すべき事項は、正社員向けのものと基本的に同一です。しかし、パート・アルバイト社員の労働条件は、一般に個々に定めることが多いことから、就業規則では適用対象となるパート・アルバイト社員に共通して適用する事項のほかは、大綱だけを定めておきます。個別に取り決める事項については「雇入通知書」等により規定すれば、ひとつの就業規則で対応することができます。
 「就業時間、休日・休暇」、「賃金・賞与、昇給」、「解雇・雇止め」、場合によっては「正社員への登用」や「子育て支援」などの条件を明示することで、パート・アルバイト社員の働きがいにもつながります。パート・アルバイト社員とは、短時間労働者であると同時に、有期雇用契約の場合が多いと思われます。また、家庭の事情もさまざまでしょう。常に雇用の不安を抱え、雇止めに関するトラブルも多いものです。個別の事情を考慮して、柔軟な対応をすることが必要です。
 また、事業主としては、トラブル回避のためにも、パート・アルバイト就業規則を作成するとともに、パート・アルバイト社員を雇い入れたときには、速やかに労働条件通知書(または、労働契約書や就業規則)を交付し、お互いに労働条件を確認してください。

提供:株式会社TKC(2006年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
戻る ▲ ページトップへ戻る