Q&A経営相談室
【マーケティング】
コーポレートメッセージのつくり方
 
Q:
 顧客に好印象を与えるコーポレートメッセージのつくり方を教えてください。(食品メーカー)
 
 <回答者>
  日経BPコンサルティング ブランド・ジャパン  プロジェクト・リーダー 吉田健一

A:
 最近、テレビコマーシャルや新聞、雑誌の広告に、企業としてのキャッチフレーズが目に付くようになってきました。例えば、「The Power of Dreams」(本田技研工業)や「panasonic ideas for life」(松下電器)などです。このような、企業が大事にする自らのあるべき姿、いわば「ブランドのDNA」を説明し、簡潔な言葉にまとめたものを、「コーポレートメッセージ」とか、「ブランドステートメント」などと呼び、一般消費者に向けて広く発信する企業が多くなってきました。その背景としては、企業がブランドコミュニケーションの一環として、企業メッセージを一般消費者に発信し、浸透させることが、他社との競合の中でユニークな企業イメージを際立たせるために有効であるという認識が広まったことにあるのだと思います。
 日経BPコンサルティングでは、コーポレートメッセージの認知度やイメージを調査する「コーポレートメッセージ調査」を毎年実施しています。その調査結果から、消費者に良いイメージを与えるコーポレートメッセージの共通点を探ってみました。ここでは2点挙げたいと思います。

安易な英語使用は控える

 まず第1は、そのメッセージを見聞きした時、その内容を確実に理解できることです。2005年調査の「メッセージ好感度ランキング」では、「マチのほっとステーション」(ローソン)、「お口の恋人」(ロッテ)、「ココロも満タンに」(コスモ石油)が、トップスリーでした。どれも、短く、簡潔に、わかりやすくを心がけているメッセージです。意味の分からないメッセージを発信しても、「訳の分からないことを言っている企業」という意図せぬ負のイメージが受け手に記憶されてしまいます。メッセージを外に発信する前に、社内で第三者的に再評価するプロセスを心がけましょう。また、海外に拠点がないのに、英語を使って格好良さを追求する風潮がありますが、多くの日本人は日本語の文化に誇りを持っています。調査では2万6000件の回答者の自由意見が寄せられていますが、一番多い意見は「なぜ日本企業なのに英語を使うのか」といった批判です。本当に日本語で伝えられないのかを確認しましょう。
 2点目は、自社だからこそ言えるべきことを探し、どんなイメージを獲得したいのかを明確にすることです。企業メッセージの発信は、「イメージの差別化」が本来の目的ですので、あれもこれも言いたくなる気持ちをぐっと我慢して、自社の「らしさ」をどのような言葉を使ってどんな風に伝えるかを考える必要があります。「清潔で美しくすこやかな毎日を目指して」(花王)や、「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」(カゴメ)などが、「らしさ」を端的に表現しているとして、調査でも高い評価を得ています。また、企業メッセージの発信は、社内モチベーションの向上にもつながるので、社内で時間をかけて議論することも重要なポイントです。その時に、背伸びをしない、一人よがりにならない言葉選びも必要です。
 企業メッセージの運用面では、企業メッセージの認知には時間がかかるので、一度作ったメッセージをコロコロと変えないことや、口先だけの会社だと言われないように、企業メッセージ通りに企業活動を遂行することが重要です。また、ロゴの印象と企業メッセージの印象を合わせることも忘れてはいけません。先進性やイノベーティブを意図する企業メッセージを持つ企業のロゴが丸っこいのは、イメージの不一致を起こし問題です。まずは、他社事例の研究から始めてはいかがでしょうか。

提供:株式会社TKC(2006年4月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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