Q&A経営相談室
【マーケティング】
雑誌掲載記事を販促に利用したいが
 
Q:
 ホームページでの自社製品の販促のため、雑誌に以前掲載された記事を利用したいと考えています。著作権侵害にならないでしょうか。(通販業)
 
<回答者>弁護士 新美裕司

A:
 雑誌などの編集物を利用しようとする場合、編集物を全体として利用するときは、当該雑誌の編集者の許諾が必要となりますが、個々の記事のみを利用するときは、その記事の著作権者に許諾をとればよいことになります(著作権法12条1項、2項)。当該記事の著作権者が当該雑誌の編集者と同じ場合も考えられます。その場合は、編集者に許諾を求めることになります。それらの著作権者の許諾をとらず、無断で編集物や各記事等を使用した場合、原則として著作権侵害にあたります。
 もっとも、雑誌の記事の利用が、著作権法上の「引用」に当たる場合には、例外的に著作権者の許諾を得ずに利用することができます(著作権法32条1項)。「引用」とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解されています
(最高裁昭和55年3月28日判決)。

出所を明示し、著作物を特定する

 著作権法上の「引用」に当たるというためには、公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内でなければなりません。条文上は、引用の目的として、報道、批評、研究が例示されていますが、それらに限られるものではありません。これらの要件を満たしているか否かは、個々の事案に応じて社会通念等に照らして具体的に判断されることになりますが、引用している文章とそれ以外の文章とが明確に区別されており(明瞭区分性)、引用している文章があくまでそれ以外の文章との関係で従たる存在であり(主従関係)、引用部分が引用の目的上必要最低限の範囲であること(必要最小限度性)が必要であると考えられています。
 また、引用する際には、「出所の明示」が必要になります
(著作権法48条)。その場合、引用された著作物が特定されていなければなりませんので、明示の仕方としては、引用部分を括弧で囲むなどして明確にした上、その後に当該引用部分が誰の著作物であるのかが分かる表示をする必要があります。雑誌の記事を引用する場合には、雑誌の名前、日付、版、巻号など、読者にどの雑誌から引用したのかが明らかになるような表示が必要となります。巻末等に引用した著作物を参考文献として一括して表示しても、引用した著作物がそれによって特定されることにはならないので、出所の明示には当たりません。

要約して引用する場合は…

 当該雑誌や記事に「禁転載」等の表示がある場合であっても、著作権法上の「引用」に当たる場合には、原則として当該雑誌・記事を利用することができます。
 「禁転載」等の表示により、著作権法上の「引用」が禁止されるのは、国や地方公共団体等の作成した広報資料、調査統計資料、報告書等を説明の材料として新聞、雑誌等に転載する場合(著作権法32条2項)、新聞、雑誌に掲載された政治上、経済上または社会上の時事問題に関する論説を、他の新聞、雑誌に転載し、または放送・有線放送する場合(著作権法39条1項)に限られます。
 それでは、著作物の内容を要約して引用することはできるでしょうか。条文上はどちらともいえません。従来の一般的な解釈としては、要約して引用することは認められないと考えられてきましたが、引用の対象が相当広範囲にわたる場合に要約して引用することを認めた裁判例もあります(東京地裁平成10年10月30日判決)。

提供:株式会社TKC(2006年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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