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平成18年5月に施行が予定されている新会社法では、一定の制約の下で、会社の規模、経営実態等を踏まえて自らがその機関を柔軟に設計することできる規定となっています。
株式会社の機関設計関係について、新会社法では次のような規定(一部)が設けられています(新会社法326条〜327条3項)。
1. |
株主総会・一人以上の取締役の設置は必須である。 |
2. |
定款の定めによって取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人又は委員会を置く事ができる。 |
3. |
公開会社、監査役会設置会社、委員会設置会社は取締役会を置かなければならない。 |
4. |
取締役会設置会社(委員会設置会社を除く)は監査役を置かなければならない。ただし、公開会社ではない会計参与設置会社については、監査役を置かなくても良い。 |
5. |
会計監査人設置会社(委員会設置会社を除く)は監査役を置かなければならない。 |
ご質問の監査役の件ですが、前記の規定からも明らかなように、監査役は必須の機関ではなく、定款によって任意に設置することができるので、新会社法施行後は監査役を設置しないことも可能です。ただし、取締役会設置会社(公開会社でない会計参与設置会社を除く)、会計監査人設置会社は監査役の設置が必要となります。
また、監査役を設置しないと、株主に対して監査役の機能を代行させる観点から取締役会の招集請求権、招集権、取締役会への出席・意見を述べる権利、裁判所の許可を必要としない取締役会議事録等の閲覧・謄写請求権、取締役に対する行為差し止め請求権の緩和等が認められ、株主権限が強化されますので、留意する必要があります。
会計参与の設置
中小会社で、新会社法上、通常選択が考えられる機関構成は次の通りです。
1.株主総会+取締役
2.株主総会+取締役+監査役
3.株主総会+取締役+会計参与
4.株主総会+取締役+監査役+会計参与
5.株主総会+取締役会+監査役
6.株主総会+取締役会+会計参与(公開会社でない会社に限る。)
7.株主総会+取締役会+監査役+会計参与
取締役会については、従前までの株式会社のように必須の機関ではなく、定款によって任意に設置することができますが、公開会社、監査役会設置会社、委員会設置会社については、設置が強制されます。なお、取締役会は従前と同様に3人以上の取締役によって構成されます。
また、会計参与は、設置に当たって特に制限は無く、定款の定めにより任意に設置することが可能です。会計参与は税理士(税理士法人)又は公認会計士(監査法人)のみ(新会社法333条1項)就任することができる株式会社の機関であり、取締役(執行役)と共同して計算書類等を作成する機能を果たすことになっています(新会社法374条1項、6項)。特に中小会社においては、会計参与の設置により会社が作成する計算書類等に信頼性が付与され、適正開示の要請に応えるばかりでなく、金融機関等による融資条件の緩和・優遇等の動きも出てきていますので、機関構成を考える上で、重要な検討項目と考えられます。
なお、現行の株式会社において、新会社法施行後も従前の必須の機関構成(株主総会+取締役会+監査役)を維持するのであれば、定款及び登記に関してみなし規定が設けられているので、改めて変更等の手続は必要ありません(整備法76条2項、113条2項、3項)。言い換えれば、ご質問のように監査役を設置しないということであると変更等の手続が必要となります。
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