Q&A経営相談室
【法 改 正】
銀行代理店解禁はビジネスチャンスか
 
Q:
 改正銀行法によって、事業会社も銀行代理店に参入できると聞きました。具体的にどういうビジネスチャンスがあるのでしょう。(食品スーパー)
 
<回答者>ファインビット 社長 中村 中

A:
 スーパーやコンビニなどの一般企業が「銀行代理店」となって、預金や送金また小口のローンなどを取り扱うことができるようにしようとする改正銀行法が、昨年10月26日に成立しました。これらの金融サービスを利用したいと思う利用者は、今年4月から金融機関の本店や支店ばかりではなく、自宅や職場近くのスーパーやコンビニなどの代理店で、サービスを受けることが出来ます。一方、金融機関としても、この「銀行代理店」の活用で自行の「窓口」を拡大する狙いもあります。すなわち、この「銀行代理店」は、最近、大幅に数を減らしてしまった金融機関の支店やその窓口担当者によって、利用者へのサービスが低下した点を補完し、逆にその利便性の向上を目指すものなのです。そこには、利用者ニーズがあるわけですから、当然ながらビジネスチャンスもあります。
 たとえば、今や、公共料金の振込みやATM・CDによる預金の引き出しはコンビニの業務になり、ニュータウン・住宅団地やマンションの購入時における住宅ローンは不動産業者の業務です。コンビニは公共料金によって集客力を高め、ATM・CDの設置によって商品の購入単価のアップを図っています。また、住宅ローンを扱う不動産業者は、住宅や分譲地の購入単価の引き上げ効果ばかりではなく、顧客の煩わしい住宅ローンの手間の解消で、競合他社との差別化を図っています。このように、従来の銀行の機能・商品を取り込むことで、「銀行代理店」業務は、本来の自社の販売力を高める効果があります。また、銀行のセールス業務や事務負担を一部肩代わることで、銀行から代理店手数料が入り、その収入増加も見込めることになります。
 平成16年12月に公表された「金融改革プログラム」にも、今後の金融機関は「製販分離」が進むと書かれています。これには、将来の金融機関は商品開発・販売企画を行う「製造部門」と、地元の個人・中小企業のニーズを把握して販売に特化する「販売部門」に分かれ、それぞれの強みを出し合う「製販分離」の動きが顕著になると明記されているのです。この販売部門は、必ずしも今までの金融機関に限ったことではなく、「銀行代理店」とも解釈できるのです。また、これは、スーパーやコンビニなどの一般企業であったり、郵便局であるとも考えられます。
 一方、この「金融改革プログラム」には、金融機関の利用者保護ルールを整備するために「投資サービス法」という法律の制定方針も述べられています。今後、金融機関の商品の多様化・高度化・複雑化に対して、その利便性や利用者ニーズは高まっていくものの、利用者の保護も一層手厚く守る必要があるので、投資家・預金者など金融商品・サービスの利用者を保護する法律の制定の必要性を唱えているのです。
 今後は、「預金」「送金」「ローン」に加えて、たとえば、預金分野では、投資信託、国債や社債などの債券、株式、生命保険や損害保険などの商品を扱えるようになります。これは、多様な商品の品揃えとなるわけですから、利用者への資金運用面のリスクの説明や商品間における誤認の防止、また個人情報の管理など、所謂「利用者保護」の責任も果たさなければなりません。このことは、従来の銀行業務である、「送金」分野や「ローン・貸出」分野にも当てはまります。また、両替・貸金庫・債務保証などの銀行の付随業務にも該当するのです。
 したがって、これらの銀行業務にビジネスチャンスがあるということで、銀行代理店となって取り込んで行く場合には、その業務における「収益性」とともに、金融機関が強く求められている「利用者保護」の責任についても、十分に検討しておくことが大切です。

提供:株式会社TKC(2006年2月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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