Q&A経営相談室
【労  務】
裁量労働制の導入要件と留意点
 
Q:
 労働時間に柔軟性を持たせるため企画業務型裁量労働制を導入したい。導入要件と留意点は? (情報処理サービス業)
 

<回答者>ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原久嗣

A:
 企画業務型裁量労働制は、事業運営に関する事項について、企画、立案、調査および分析の業務を自らの裁量によって遂行する労働者を対象に、労使委員会の決議で定めた時間労働したものとみなすという制度ですが、この裁量労働制を導入するための要件と導入の留意点は次のとおりです。
 まず、対象となる事業場には、本社・本店のほか、独自に当該事業場の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等も含まれます。
 次に、対象となる業務は、事業の運営に関する事項について、企画、立案、調査、分析を行う業務で、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段および時間配分の決定等を使用者が具体的な指示をしないような業務とされています。具体的には、行政通達で、次のような業務が例示されています。
1. 経営企画を担当する部署:経営状態・経営環境等について調査、分析を行い、経営に関する計画を策定する業務、および、現行の社内組織の問題点やそのあり方等について調査、分析を行い、新たな社内組織を編成する業務。
2. 人事・労務を担当する部署:現行の人事制度の問題点やそのあり方等について調査、分析を行い、新たな人事制度を策定する業務、および、業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査、分析を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務。
3. 財務・経理を担当する部署:財務状態等について調査、分析を行い、財務に関する計画を策定する業務。
4. 広報を担当する部署:効果的な広報手法等について調査、分析を行い、広報を企画・立案する業務。
5. 営業企画を担当する部署:営業成績や営業活動上の問題点等について調査、分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務。
6. 生産企画を担当する部署:生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査、分析を行い、原材料等の調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務。

  第三に、対象となる労働者は、「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する」者でなければならないものとされています。また、対象業務に常態として従事していることが必要です。

従業員の個別の同意を得る

 また、導入の手順は、次のとおりです。
1. 労使委員会を設置する。
2. 労使委員会で、運営規程を作成する:運営規程には、委員会の招集、定足数、議事、その他労使委員会の運営に関する必要な事項、などについて定めます。
3. 労使委員会の委員5分の4以上の合意により、所定の事項を決議する:決議では、対象業務の範囲、対象労働者の範囲、対象労働者のみなし労働時間のほか、対象労働者の健康および福祉を確保するための措置などについて決議します。
4. 「企画業務型裁量労働制に関する決議届」を所轄労働基準監督署長に届け出る:「決議届」とともに、就業規則の変更届も必要です。
5. 労使委員会の議事録を作成し、周知する。
6. 適用にあたっては、適用する労働者の個別の同意を得る。

 なお、所定労働時間を超えてみなし労働時間を定める場合には、時間外労働手当に相当する手当を支給することが必要となります。また、このみなし労働時間制の下でも、深夜労働、休日、休憩に関する労基法の規定が適用されますので、注意が必要です。

提供:株式会社TKC(2006年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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