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原油高はわれわれ運送業にとって非常に頭の痛い問題です。燃料である軽油は2年前と比較してリッターあたり20円超も値上がりしており、当社の場合で1台・1運行あたり4000円もの燃料費上昇になっています。
また、原油高はタイヤなどの石油製品の価格にも影響するので、広範囲でコストアップに繋がります。今後、長期的に見て原油が以前の価格帯まで下がるとは考えられません。それだけに一時的な対処療法ではなく、事業全体で捉える必要があるといえるでしょう。
当社では、燃料費軽減策を短期・中期・長期の3つの視点から実践しています。結論を先に言えば私は中期の施策がもっとも大事だと考えていますが、まずは順を追って紹介していきます。
短期の施策とは、ズバリ「価格交渉」です。「複数の燃料仕入業者から見積もりをとる」「荷主に対して輸配送料金の見直しをお願いする」などで、仕入と売上の両方を改善し利益を確保します。仕入では、当社の取引している燃料仕入業者は4社あり、そこと毎月価格交渉を行っています。その上で一番低い料金で各社から仕入れています。もう一方の輸配送料金の見直しは、現行収受料金に対して運行費がどれだけ上昇したかを説明し、料金見直しへの理解を求めています。
たぶん同様の交渉事は、ほとんどの企業で試みると思います。ところがその効果には、かなりバラツキがあるのではないでしょうか。実はこれらを行うには、2番目の中期施策がとても重要になってくるのです。
例えば、仕入業者と価格折衝を行うとき、当社では支払いサイトの短縮化などの交換条件を提案し理解を得ていますが、それができるのは数年かけて財務状態を改善し無借金経営を実現できているからです。輸配送料金の見直しでは、原価構成比一覧などを交渉資料として提示します。これも細部にわたる運行費管理を実施してきたことで作成できています。短期施策といっても、財務管理や原価管理といったしっかりした土台がないと期待する効果は見込めないのです。
運送業の原価管理には運行管理も含まれますが、これに徹底して取り組むことはもちろん直接的な燃料費低減にも繋がります。いま業界が推進している「エコドライブ」はその一つです。エコドライブとは環境に優しい低燃費運行のこと。当社は3年ほどまえからこれに取り組み、この間に約20%の燃費改善に成功しています。
エコドライブの実践には、組織的な仕組みが必要です。そこで当社では、燃費だけでなく安全管理までを含めた業務全体の改善運動を実施してきました。一例を挙げると、詳細な走行記録が行える「デジタルタコメーター」の設置、「無駄燃費割合ランキング表」「燃費実績月次推移比較表」などといった管理資料の作成、「無事故報奨金制度」の整備といったことを行っています。その甲斐あって全日本トラック協会の「安全性優良事業所」の認定もいただくことができました。
また、仕入面での中期施策では他社との燃料共同購入体制を整備中です。
最後に長期策ですが、これは代替エネルギー導入の検討です。いま考えられるものとしては、電気、天然ガス、メタノール燃料、廃油や植物油を利用するバイオディーゼルなどがあります。
燃料は不可欠なもので、どうしても削減には限界があります。抜本策として代替エネルギーの検討が、これからの重要課題だと考えています。(インタビュー・構成/『戦略経営者』・千葉博文)
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