Q&A経営相談室
【リスク管理】
登記簿を利用した信用調査のポイント
 
Q:
 飛び込みで新規取引の引き合いが来ています。信頼できる会社なのか調べたいのですが、こういった際に登記簿が役立つと聞きました。活用のポイントを教えてください。(食品卸売業)
 
<回答者>帝国データバンク 情報部記者 車 克成

A:
 登記簿には大別して商業登記簿と、不動産登記簿があります。
 商業登記簿には、社名、住所、資本金、取締役・監査役、設立年月日、目的などが記載されます。
 不動産登記簿は、さらに土地登記簿と建物登記簿に分けられ、所在地、面積・規模、種別・構造、所有者、抵当権などが記載されます。
 商業登記簿も、不動産登記簿も、誰でも法務局で登記事項証明書を取得することができます。通常、1通が1000円となります。なお、不動産の場合、土地と建物はそれぞれ別個の資産ですので、同一場所に所在する建物と土地の双方の登記事項証明書を取得することが必要です。

 以前は所轄の法務局でないと登記事項証明書を取得できませんでしたが、最近は、コンピュータ化された法務局ならば、遠隔地の登記事項証明書も取得することが可能になってきました。まだコンピュータ化されていない法務局でも返信用の封筒同封のうえ郵便にて取得が可能です。
 なお、一部の法務局ではインターネットでも登記情報を取得できますが、事前の登録が必要であり「証明書」とはされません。

8つのチェックポイント

 商業登記簿の場合、チェックポイントとして、次の5点が重要です。

(1)社名 社名だけではすぐに業務内容が分からない場合や有名企業に関係があるかのような場合は要注意です。変更が多い場合は過去を隠しているのかも知れません。
(2)住所 引越しが多い場合。引越しには費用がかかるし、過去を隠したかったり、大家や他のテナントとの折り合いが悪いケースもあります。
(3)資本金 過少資本は財務面が脆弱です。また減資は、不良債権を処理した直後のことが多いようです。
(4)代表 社内実力者に代表権が無いときは、真の実力者が表に出られない理由があります。また大会社でも無いのに代表権が複数あったり、共同代表なら代表者間で信頼関係が形成されていない証拠です。
(5)目的 総合商社ならともかく、普通の企業なら、会社の目的は4つもあれば十分です。10以上ある場合は、取り込み詐欺を目的とするパクリ屋の可能性が高いと思われます。

 不動産登記簿には、表題部(=当該不動産の所在地、規模・構造)、甲区(=所有権など)、乙区(=抵当権など)、の3つの部に分かれて記載されています。このうちチェックポイントとして次の3点が重要です。

(1)所有者 「××ビル」とビル名に社名があっても、その会社が保有していないケースがあります。賃貸ビルにもかかわらず、テナントが1社しかない場合、ビル所有者がテナントの社名をビル名として許すケースなどです。また、不動産会社や投資ファンドに売却してリースバックを受けている場合もあります。この場合は所有者の利益の先食いとも言えます。
 また、信託銀行以外に信託している登記があれば要注意です。商工金融会社が担保としているのかもしれません。
(2)差押、仮差押 これらが登記されているなら、もう末期的症状です。
(3)抵当権 銀行、大手ノンバンク以外の抵当権は要注意です。商社やメーカーが設定している場合は、取引先を信用していない証拠です。
 なお、「登記留保」といい、抵当権が登記されていなくても金融機関が抵当権を設定している場合もあるので、こちらにも注意が必要です。

提供:株式会社TKC(2005年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
戻る ▲ ページトップへ戻る