Q&A経営相談室
【法  律】
有限会社から株式会社移行によるメリットは?
 
Q:
 当社は現在有限会社なのですが、来年5月に施行される新会社法を機に株式会社への移行を検討しています。そのメリットとデメリットについて教えてください。(菓子の製造小売業)
 
<回答者>新日本監査法人 公認会計士 渡辺伸啓

A:
 新会社法の施行に当たり、従来までの有限会社法は廃止され(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(「整備法」と言う)1条3号)、新会社法施行後は新たに有限会社を設立することができなくなるとともに、施行の際に現存する旧有限会社については、新会社法の規定による株式会社として存続することとなります(整備法2条1項)。そして、当該会社(「特例有限会社」(整備法3条2項))については、旧有限会社と同様な取り扱いが可能となるよう、様々な経過措置や特則を整備法で設けています。
 一方、新会社法では株式会社規律と有限会社規律について一体化を図る観点から、最低資本金規制の撤廃や機関設計の柔軟化が図られており、有限会社が容易に株式会社に移行することができる条件が整えられています。 
 このため、現行の有限会社については、株式会社へ移行するのか、それとも現状のまま(特例)有限会社として存続していくのかが重要な検討課題となります。株式会社へ移行後、再び特例有限会社へ戻すことはできませんので、会社の経営実態、経営方針のほか、次のようなメリット・デメリットを良く検討する必要があります。

移行の手続

 株式会社への移行については、定款を変更してその商号中に「株式会社」という文字を用い、当該定款変更を登記することによって成されます(整備法45条)。なお、当該定款変更に係る登記は、これに係る株主総会決議後、その本店の所在地においては2週間以内に(支店は3週間以内に)、当該特例有限会社については解散登記を、新株式会社については設立登記をする必要があります(整備法46条)。

株式会社へ移行するメリット

(1)会計参与等の様々な機関を設置することができる。
 特例有限会社では会計参与等株主総会・取締役以外の機関については「監査役」のみ設置が認められており(整備法17条1項)、新会社法で規定されている他の会計参与等の機関を設置することができません。 
(2)組織再編行為がやり易くなる。
 特例有限会社は合併・分割に当たって、吸収合併存続会社や吸収分割承継会社となることや、株式交換または株式移転をすることができません(整備法37条・38条)。
(3)株式会社になることにより、対外的なイメージが良くなる。一般に信用があるように見られる。

株式会社へ移行するデメリット

(1)取締役(監査役)の任期が最長10年までとなる。
 新会社法では取締役(監査役)の任期について、すべての株式に譲渡制限を付している株式会社(公開会社ではない株式会社)については、定款により最長10年まで伸長することができるとされています(新会社法332条2項、336条2項)。これに対して特例有限会社ではこれらの規定が不適用とされており(整備法18条)、従来までの有限会社と同様に任期に関する規制がありません。
(2)決算公告が強制される。
 新会社法では決算公告が義務付けられていますが(新会社法440条)、特例有限会社については適用が除外されており(整備法28条)、決算公告が義務付けられていません。
(3)株式会社への移行により大会社に該当すると、会計監査人の設置が義務付けられる。
 新会社法でもいわゆる大会社に該当する株式会社は会計監査人の設置が義務付けられていますが(新会社法328条2項)、特例有限会社については、たとえ大会社に相当するような会社であっても、会計監査人の設置が義務付けられておりません(整備法17条2項)。 

提供:株式会社TKC(2005年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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