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PET(陽電子放射断層撮影装置)は、ブドウ糖を大量に摂取するがん細胞の特性を生かして、がんを発見する検査です。検査の前に弱い放射線を出す物質を付加したブドウ糖(FDG)を注射します。
数十分安静にして、全身にFDGが行き届いたところで、検査台に横になり、一度に全身の画像撮影をします。がん細胞がある場合、そこにFDGが集中するため、FDGに含まれる放射線が画像に映ることになります。検査時間は約30分で、トータルで2時間程度です。
この検査の最大の特徴は、さまざまな種類のがんを1回で楽に検査できる点にあります。もう一つの特徴は5ミリ程度の小さな早期がんも見つけやすいことです。そのため、人間ドックなどの健康診断に積極的に取り入れられるようになってきました。日本アイソトープ協会の調べによると、PETを導入している施設は全国で85施設に上ります。
がんかどうかを確認する検査として、細胞診より安全です。また、再発やリンパ節転移の有無の診断や遠隔転移の発見、手術などの治療効果の判定にも有用です。
短所は、がんがある場所が特定しにくいことです。また、すべてのがんが見つけやすいわけでなく、高分化腺がんや膀胱、腎臓などのがんは正確な判断が難しいことも欠点です。甲状腺、肺、乳腺、大腸、膵臓、リンパ腫などのがんは発見しやすく、一方、胃、肝細胞、前立腺、腎臓、膀胱などは発見しにくいがんです。
この他、血糖値が高い人では、もともと糖が多いため、病変がはっきり画像に現れにくいのも欠点です。
がんの検診では、肺ならヘリカルCTなど各臓器別の診断法があり、診断の有用性では個別の診断法よりもPETは劣ります。PETにも欠点がありますが、他の検査にはない長所があるので、さまざまな検査法の中でより有効的に利用されることが求められます。
健康保険は条件つきで適用
健康保険については、肺がん、乳がん、大腸がん、頭頸部がん、脳腫瘍、膵がん、悪性リンパ腫、転移性肝がん、原発不明がん、悪性黒色腫の10種類において、条件つきで適用になります。肺がんの場合、次の2つの条件のうちどちらかが該当する場合です。
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他の検査、画像診断により肺がんの存在を疑うが、病理診断により確定診断が得られない場合。 |
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他の検査、画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確定できない患者。 |
人間ドックなどで健康診断として受ける場合は当然適用外で、その場合の費用は8〜10万円程度です。
なお、PETで受診者が受ける被爆線量は、胃のX線撮影の半分程度、胸のX線撮影の2倍程度で、被爆による影響はほとんどありません。ですから、がんの早期発見のために年に2回程度受けるのなら問題はないと言えます。
ただし、妊娠中あるいは妊娠の可能性のある人には、胎児への影響を配慮して、検査を勧めていません。
がんの検査には、CT(コンピューター断層撮影)がよく用いられますが、小さな腫瘍の良性・悪性の区別が難しいのが欠点です。一方、前述したように、PETでは腫瘍の場所が確定しにくいという欠点があります。
最近では、両者の欠点を補い、より正確に診断する検査法として「PET‐CT装置」が開発され、一部の施設で取り入れられています。 (インタビュー・構成/東 茂由)
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