Q&A経営相談室
【資金調達】
ベンチャーキャピタルとの付き合い方
 
Q:
 ベンチャーキャピタルから訪問をうけました。注意すべき点を教えてください。 (ITベンチャー)
 
<回答者> 中小企業基盤整備機構 プロジェクトマネージャー 西村一則

A:
 ベンチャーキャピタルからの訪問をうけた際には、慎重に対応することが大切です。銀行系、証券系、または独立系で歴史と実績を有するベンチャーキャピタルか否かを確認することが必要でしょう。信頼できるベンチャーキャピタルであれば、貴社を知った経緯を聞くことです。大抵は、貴社が展示会やセミナー等で製品紹介や会社説明を行ったか、新聞記事として大きく取り上げられたことで注目したと答えるはずです。
 ベンチャーキャピタルには、ベンチャー企業から会社説明書や事業計画書が数多く届きます。また、ベンチャーキャピタルも、新聞や雑誌や展示会等で情報収集しています。その中から有望な先を探し企業訪問を行います。100件の情報を得ても、企業訪問するのは1、2件です。
 ベンチャーキャピタルが訪問したからと言って、直ちに出資の話に結びつくことはありません。ベンチャーキャピタルとの接触ができた、お付き合いが始まったという程度に理解しておくことが妥当です。ベンチャーキャピタルは、最初の訪問で、貴社の技術や製品、取引先や販売計画、財務状況、経営者と組織等について、概要を把握します。有望な市場を対象にしているか、技術や製品に競争力があるか、収益性の高いビジネスモデルであるか、企業の成長性が高いかなどを判断します。それらの点で有望なベンチャー企業だと判断すれば引き続き接触しますが、有望でないと判断すれば再度訪問することはありません。
 「資金調達の予定はありますか。他のベンチャーキャピタルは来ていますか」などと聞かれたら、貴社に対して関心が高いと判断できます。再度の訪問を待てば良いと思います。ベンチャーキャピタルは、「有望なベンチャー企業であるが直ぐに投資する段階にない。もう少し成長を待つべきだ」と判断すれば、「今後とも情報交換させてください」と言って帰ります。その場合は、貴社からベンチャーキャピタルに積極的に情報提供し、関係を維持していくことが重要です。

本当に資金が必要かどうか…

 さて、ベンチャーキャピタルが、貴社を「有望なベンチャー企業であり直ぐに投資したい」と思うような場合について説明します。
 まず、貴社にとって資金調達が必要かどうかを検討して下さい。事業計画から設備投資や運転資金が必要であれば好機ですが、出資してもらえそうだから事業拡大するという判断は誤りです。販売の見通しもなく過大な設備投資を行うことになります。資金調達が必要な場合は、その方法について検討します。ベンチャーキャピタルに出資してもらうということは、株式を持ってもらうことです。創業者、経営者が安定的に経営する上では、3分の2以上の株数を維持する必要があります。ベンチャーキャピタルの持株比率が高いと、経営に大きな発言力を持たれるとともに、株式公開時に証券市場で大量に売却され株価維持に苦労することになります。過半数を持たれると支配されることになりかねません。
 ベンチャーキャピタルが出資するということは、有望な企業であることを意味しますので、取引上の信用を得ることになります。また、ベンチャーキャピタルが販売先等を紹介してくれるなど、支援も期待できます。ベンチャーキャピタルとの良好な関係を築くことが、ベンチャー企業の経営にとって有効と言えます。
 また、独立行政法人中小企業基盤整備機構(TEL 0570-009111)では、中小企業の経営について無料電話相談や窓口相談を実施していますのでご活用をお薦めします。

提供:株式会社TKC(2005年7月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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