Q&A経営相談室
【省 エ ネ】
温暖化ガス削減に対処するには
 
Q:
 CO2などの温暖化ガス削減を促す京都議定書が発効しましたが、中小企業はその対策をどう考えればいいのでしょうか。(金属加工業)
 
<回答者> 日本能率協会コンサルティング チーフコンサルタント 下垣 彰

A:
 今年2月に発効した京都議定書で、日本は1990年の実績に対して、温室効果ガスの排出量を6%削減する約束をしました。しかし2003年には逆に8%増加し、今後、様々な分野で、省エネルギーの取り組みの強化が求められると思われます。
 製造業に求められる取り組みは、主に、製品性能の省エネルギーと、その製造プロセスの省エネルギーです。
 前者は、完成品メーカーに求められます。すでに冷蔵庫やエアコンなどでは、トップランナー方式と呼ばれる方式でエネルギー効率を競わせる法律が施行されています。これにより、エネルギー効率が基準以下の製品は実質的に販売できなくなり、完成品メーカーは、よりエネルギー効率の高い製品の開発を迫られています。
 省エネルギー型製品の開発は、完成品メーカーの力だけではできないため、部品、材料メーカーも含めた開発力がその差を決めます。逆に、部品、材料メーカーにとっては、製品のエネルギー性能を高める技術、部品、材料の提案、開発により、業績を伸ばすチャンスになります。
 後者は、工場の省エネルギーの取り組みの管理です。エネルギー使用量の多い工場は“エネルギー管理指定工場”として、エネルギー使用量の削減計画や実績を、監督官庁に報告しなければなりません。目標が達成できない場合は、監督官庁から事情聴取されたり、それを公開されたりすることもあります。エネルギー管理指定工場は、日本全国で1万1584工場(平成16年度末)にもなり、中小企業でも指定を受けていることがあります。
 また、多くの大企業では、環境管理や環境への取り組みを調達条件にするグリーン調達を行っています。調達先の環境管理状態だけでなく、環境パフォーマンスを評価することもあります。エネルギー使用量の大きい工場は、省エネルギーの目標やその達成状況が評価されるのです。

省エネルギーで競争力アップ

  加工メーカーは、その製造プロセスでエネルギーを多く使用することがあり、省エネルギーとコストダウンの両面を狙い、次の3つの視点で改善に取り組む必要があります。
 第1に、設備のエネルギー効率の向上です。
古い設備は、初期性能としての効率が悪いことが多いのです。またメンテナンスが不十分な設備は、部品の劣化により効率が低下している可能性があります。設備のエネルギー効率性能と、その劣化状態を診断し、適切な改善を行なう必要があります。
 第2に、設備の稼動ロスの削減です。稼動ロスとは、故障、段取り、切り替えなどによる停止、空転、チョコ停などです。こうした稼動のロス時間もエネルギーを消費していることがよくあり、稼動ロスのミニマム化を追及する必要があります。
  第3に、製造条件の最適化による材料ロスの削減です。製造条件の余裕が少なすぎると不良が増加し、余裕が大きすぎると製品にならない材料が増加します。こうした材料ロスにも、その前工程で、エネルギーも加工費などのコストも投入しているのです。
 こうした取り組みには次のメリットがあります。無駄な材料やエネルギー消費が減り、コストダウンになります。ロスを極限まで少なくする改善の取り組みは、製造技術力や管理力を高めます。そして、高い環境効率へのチャレンジは、従業員のモチベーションを高めます。したがって省エネルギーを企業のチャレンジ課題と位置づけた取り組みは、企業の競争力を高めます。

提供:株式会社TKC(2005年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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