Q&A経営相談室
【税  法】
経営革新承認企業は留保金課税が不適用に
 
Q:
 中小企業新事業活動促進法の承認企業は、「留保金課税の不適用」など税制上の優遇措置が受けられると聞きました。概要を教えてください。(印刷業)
 
<回答者>東京総合経営 公認会計士・税理士 高橋昌宏

A:
 経営革新支援法は、平成17年4月6日に改正されました。この改正に伴い、中小創造法ならびに新事業創出促進法を統合・強化することとなり、中小企業新事業活動促進支援法(以下、「新法」といいます)と改称されています。この改正が、平成17年度税制改正に影響を与えました。その一つが同族会社に対する留保金課税の不適用です。
 留保金課税の不適用制度は従来からありました。それは、新事業創出促進法において新事業分野開拓を実施することについて認定を受けた法人であれば、その認定された計画を実施している事業年度において、同族会社に対する留保金課税を不適用とするというものです。
 ただし、新事業創出促進法の認定を受けるために必要な「事業の新規性」とは、「通常の取引又は社会通念上、『新しい』と認められる商品の生産又はサービスを提供する事業」というものでしたから、中小企業にとっては、とても高いハードルでした。
 これに対し、平成17年税制改正では、新事業活動促進法(新法)に基づいて申請し承認された経営革新計画の事業を実施している年度における同族会社に対する留保金課税が不適用となりました。
 新法における経営革新計画の承認を受けるために必要な「事業の新規性」とは、「個々の中小企業者にとって『新たなもの』であれば、既に他社において採用されている技術・方式を活用する事業(でもよい)」というものであると思われます。
この要件であれば、多くの中小企業がチャレンジできることでしょう。
 例えば、経営革新支援法では、セルフサービス方式を採用していたサンドイッチハウスを営んでいた法人が、建物の老朽化に伴う建替を機に、店内にチャペルを作りレストランウエディングを行うというような経営革新計画が承認されていますし、温泉旅館では客室に専用露天風呂を作るというような経営革新計画が承認されています。
 経営革新支援法においては、主として低利融資などを受けることを目的として、中小企業は承認申請をしていました。この方向性は、新法においても変わらないでしょう。さらに、税制改正により、経営革新計画の承認を受けた会社には同族会社の留保金課税が不適用となることになったのです。
 では、同族会社の留保金課税が不適用となると、企業にとって、どのような利点があるのでしょうか?
 会社が利益を出すと、当然のことながら利益に比例して計算される法人税を払わなくてはなりません。しかし、同族会社の場合には、それだけでは済みません。一定の金額を超えて利益が生じていると、社内に留保されるはずの税引き後利益に対しても更に法人税を払わなくてはならなくなります。この社内に留保される利益に対して課せられる法人課税のことを留保金課税と呼んでいます。この制度は、日本独特のものではなく、ドイツなどにもあります。公開会社と比較して、同族会社では、配当をしないことにより会社に利益を溜める傾向にあることから、株主へ配当をした場合と同じような課税を行うために導入された制度です。
 このように社内に留保しようとした利益にまで法人税を課せられたのでは、企業の経営基盤が弱体化してしまいます。これを避けるためには、新法に基づく経営革新計画の承認を受け、企業の事業領域の強化を行うと共に、同族会社の留保金課税の不適用を受けることにより、財産基盤の強化を図るということも経営戦略の一つであると考えます。

提供:株式会社TKC(2005年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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