Q&A経営相談室
【危機管理】
クレーマーに対処する方法とは
 
Q:
 クレーマーと覚しき人物から当社商品の“不良”を指摘されました。どう対処すればよいかお教えください。(食品加工業)
 
<回答者>クレーム処理研究会 主宰 川田茂雄

A:
 自分の会社をかばうあまり、お客様を安易にクレーマーと決めつけないでください。“あんたはクレーマーだ”といえば、確実にお客様を一人失うことになるからです。まずは、すばやい対応と徹底した事故検証で原因を突きとめることが先決です。
 さて、クレーマーは2つのタイプに分類できます。1つは、クレームをつけて利益を得ることを目的にするクレーマー。もう1つは利益が目的ではなく、反論の出来ない相手をいじめて自分のストレスを解消するようなタイプの愉快犯型です。利益を得るタイプも愉快犯型も一度成功して味をしめると、何度でも繰り返してくるといういやな特性をもっています。
 例えば「弁当のご飯に異物が混入していて口の中を切った、どうしてくれる?」などとクレームをつけて、暗に損害賠償を要求するというケース。店側がよく原因を調べないままに、いくばくかのお金を渡して解決したりすると、味をしめて次々と同じクレームを繰り返します。これが前者の、利益を得るのが目的のクレーマーです。
 また、例えば手ごろなカメラをカメラ量販店などで買い、メーカーの窓口に持ってきてイチャモンをつけて引き取らせるというケース。メーカーが返品を承諾するまで執拗に粘ります。さらには機会損失を被ったなどと、暗に損害賠償を要求する。メーカーが根負けして定価で引き取れば確実に実販価格との差額を儲けることになりますが、実はこのタイプは利益を得るのが目的ではありません。
 実際、彼らはお金を受け取ると、またカメラを買ってきてイチャモンを繰り返します。際限がありません。これは利益目的というより、反論の出来ないサラリーマンをいじめて喜んでいる、まさに愉快犯型といえます。
 

相手の思いを察知する

 クレーム処理で一番重要なのは、お客さまのいわれることをよく聴くことです。リストラされた寂しさゆえに積もり積もった不満をぶつけてくる人もいるでしょうし、正当な理由のもとに当然の要求をしてこられる方もいるわけです。したがって相手がどんな思いで何を主張したいのかを、正確に察知しなければいけません。それができればクレームの9割は解決できます。
 ただし同業他社に対し同じようなクレームを繰り返している人物、これは危険です。競合企業であっても、普段からその種の情報が入手できるようなお付き合いはしておくべきです。
 そのようなクレーマーと戦うには、まず窓口を一本に絞ります。どこに連絡が入ろうと窓口は一つにして回答する。いうまでもありませんが、決して怒鳴ってはいけない。
特に電話での応対で見えない相手を怒鳴りつけないように。怒鳴ったとたんテープに録音され、ホームページに音声入りで公開されてしまいます。
 それと、最前線の担当者を孤立させてはいけません。クレームは営業や販売など最前線部隊だけの問題ではなく、全社の問題として捉えるべきなのです。どんなベテランの社員でも、仕事熱心で責任感の強い人ほど、クレーマーと会社の間に入って孤立します。攻めるも守るも命がけの時代であることを肝に銘じ、全社員が一歩踏み込んで対応することが求められます。
 担当者も、この問題は自分で解決できると思っても、上司への報告は早めにすることが重要です。それが全社のコンセンサスを確実なものにします。そして、おかしいと感じたら早めに警察や弁護士に相談することです。

提供:株式会社TKC(2005年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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