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空き巣や強盗に限らず日本で起こる犯罪は、年々巧妙化、凶悪化する傾向にあります。中でも企業や店舗は、一度に多額の現金や多くの製品・商品を入手するだけに犯罪者のターゲットになりやすいといえるでしょう。
加えて、盗品を売買する国際的な闇の流通ルートの存在が、企業等を狙った犯罪の増加に拍車をかけています。例えば数年前、紳士服専門の大型店に賊が入り、店舗の商品をすべて盗むという事件がありました。このケースでは犯罪組織から実行犯グループが依頼を受けて行い、さらに盗品は専門の仲買業者を通じて東南アジアに流されたとみられています。発注者と受注者、流通業者がいるわけです。これを「リクエスト盗」といいますが、頻発する自動車の盗難事件などもほぼ同じだと考えられています。このように、犯行がより組織的、計画的になってきています。また外部からの犯行だけでなく、内部犯行も増えています。先般も看護師と薬品卸業者が結託し、勤めていた病院から医薬品を盗むという事件が起きました。いまは防犯会社に任せきりでは、防ぎきれない時代なのです。こうした背景を踏まえ、企業は対策を見直す必要があります。
防犯対策としてまず行うべきことは、自社の危険度を測ることです。
狙われる対象は何か、それに対して現状の防犯体制で大丈夫なのかを、防犯会議を開いて検討します。業種業態によって、現金、商品、情報などといったように守るべき資産が違いますし、社屋や倉庫の周辺環境によってもリスク度合いは変わります。そうしたことを一度すべて棚卸します。その際、できるだけセキュリティの専門家も加え、意見を聞くことをお薦めします。
次に具体的な対策です。実際の防犯対策は各企業によってケースバイケースなので、ここでは外部からの犯行に対する一般的なディフェンス策について述べます。ポイントは3つです。
第1のポイントは、外観の対策。犯罪者が一目見て「これは手強い」と感じさせるようにします。 一例を挙げると、窓には格子をつける、シャッターを防犯シャッターにする、外部の視線から死角になる場所を作らないなどといったことです。
表1 ドロボーが嫌がるもの |
第1位 |
防犯カメラ |
56% |
第2位 |
防犯センサー |
36% |
第3位 |
近隣住民の目 |
36% |
|
表1に「ドロボーが嫌がるもの」を示していますが、これらを目立たせるようにすることで犯意をある程度そぐことができます。
2つめは、より実行力のある対策です。これには「侵入しにくくする対策」と「内部のものを持ち出しにくくする対策」の2つがあります。 前者は、鍵を指紋認証や電子ロックなど最新のものに変える、使用頻度の低いドアは埋めてしまうなど。後者には、金庫にドアよりも大きな鉄板を溶接で取り付ける、といったことが挙げられます。 ここで重要なのは、犯行時間を極力遅らせるという点です。
表2
ドロボーが侵入を諦める時間 |
● |
2分以内 |
17% |
● |
2〜5分 |
50% |
● |
5〜10分 |
25% |
|
表2は「ドロボーが侵入を諦める時間」ですが、侵入に時間がかかればそれだけ被害を回避できる可能性が増します。 また侵入されても、通報から警察が現場に駆けつける平均時間が17分15秒なので、持ち出すのにそれ以上の時間がかかるように対策すればより効果があるでしょう。
最後は、社内で警察への通報体制を整えること。警報装置が働いたら社員に連絡が行き、すぐに110番するといった仕組みを作ります。
防犯対策の相談は、私が理事長を務めるNPO法人犯罪予防相談センターでも受け付けています。詳しくはHP(http://www.cj-net.org/)をご覧ください。
(インタビュー・構成/「戦略経営者」・千葉博文) |