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まず、コンテンツ法というのは「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」が正式名称で、昨年5月に自民党提案の議員立法として成立しました。
同法は、すでに平成14年に成立している「知的財産基本法」の基本理念をさらに発展させて、コンテンツ(映画、音楽、演劇、アニメ、コンピュータゲームなど)制作に関係する事業者の権利義務を明確にし、創造、保護、活用を促進するというものです。その概要は、「基本政策部分」と「具体的部分」とに区分できます。基本政策部分は体制の整備などを求めるもので、コンテンツの円滑な流通促進、保存の促進、利用者の格差是正等が努力規定として設けられました。
具体的な規定として盛り込まれた項目のなかで、大変重要なのは、国の委託に関するコンテンツの知的財産権の移転に関して例外規定を設けたことでしょう。すなわち、国は公共の目的で利用するコンテンツに関しては、常にその著作権をはじめとする財産権のすべてを、基本的に国家に帰属するものとしてきました。国有財産法は、国家が費用を出したものに関しては、その成果が国家に帰属するよう求めています。そのため、通常、コンテンツの制作を制作会社に委託した場合、その作品の著作権は国に帰属するとされてきました。
ところが、こうした国家が保有するやり方では、コンテンツの流通が促進されず、死蔵され、文化の発展に寄与しないことも考えられるため、制作者サイドの要求として、著作権の留保をはじめとする権利の調整を求めていました。
そこで、今回のコンテンツ法では「国は、知的財産権を受託者または請負者から譲り受けないことができる」(法第25条)と定めました。その条件は、(1)国に各種の報告をすること、(2)国がいつでも無償で利用できること、(3)長期間利用しないときは第三者の利用を許諾すること、の3つで、いずれにも該当する場合としています。
すでに、知的財産基本法によって、政府は知財立国を目指すことを宣言したわけですが、コンテンツ法によってさらに具体的にコンテンツの保護、利用促進を図るための対策を進めることになったとみていいでしょう。
アジア各国は我が国同様知財立国を目指しており、韓国は国家戦略として国が強く支援してコンテンツ産業の振興を推進しており、特にオンラインゲームの生産は世界のトップクラスにまで成長しています。台湾、中国なども独自の知的財産の開発、保護を進めており、今後の競争はますます激しくなってくると思われます。
コンテンツ産業に与える影響
この法律は、コンテンツ産業に関わる事業者に広く影響を与えるものとみられます。とくに前述したように、国の委託を受けて制作する場合などは、交渉内容が大きく変化することになるでしょう。受託事業者となるプロダクションでは、的確な対策を準備して積極的に権利確保のための交渉を行う必要があります。
また、国や地方団体、独立行政法人なども、コンテンツビジネスに対して多くの配慮を求められており、創作活動における交渉は大きく変化していくことになるでしょう。
とはいえ、この法律は、こうしたコンテンツ戦略の基礎となる各種の理念を打ち出していますが、予算を伴うものではなく、具体性に欠けるという点で、限界を持ちます。議員立法であること、基本法として立法されていることから、こうした限界は自ずと生じるわけですが、今後は「どのようにこれを具体化、現実的に作用させるのか」に注目し、具体的要求を出していくことが求められます。
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