Q&A経営相談室
【法  律】
偶然入手した日本刀の取扱法
 
Q:
 相続関係で実家の蔵を整理したところ日本刀が出てきました。どのように扱ったらいいか教えてください。(木材卸売業)
 
<回答者> 日本刀専門店 (株)銀座長州屋 代表取締役 深海信彦

A:
 刀剣類(脇差・短刀・槍・薙刀・火縄銃を含む)が、古い建物や蔵などから発見された場合、発見者がとらねばならない処置は次の3点に要約されます。
 1.法律面での手続き
 2.刀剣を綺麗な状態で保存する方法
 3.刀剣に興味がない場合の処分方法

 まず最初に行なわなければならないのは、刀剣類の法律的な所在確認です。届け出済みで美術品として価値のある刀剣類は、昭和26年に制定された『銃砲刀剣類所持等取締法』により、各都道府県の教育委員会で台帳が作成され管理されており、『銃砲刀剣類登録証』(以下『登録証』)が発行され、所持が認められています。つまり、『登録証』が付帯している刀剣類は所持が認められているということです。ただしこの法律は、刀剣類の所持者を管理し所持許可証を発行するものではなく、刀剣類そのものの所在が管理されるということです。
 このため、蔵などから見つかった刀剣類に『登録証』が付帯されているか否かの確認をし、『登録証』がなければ、新たに交付の手続きを受けることになります。『登録証』が付帯されていた場合には、刀剣類を相続した意味から、所有者変更届けを、その『登録証』に記載されている都道府県の教育委員会に提出するだけで、その他には一切の手続きは必要がありません。
 一方、『登録証』が付帯していない刀剣類の場合には、『登録証』を交付してもらうため、速やかに次の通りの手続きをしてください。
 まず始めに刀剣類が見つかった住所を管轄する警察署に刀剣類を発見した旨を伝え、指示に従って『発見届』を発行していただきます。ここでは、見つかった状況を正確に説明することになります。
 『発見届』が発行されたなら、各都道府県によって開催日は異なりますが、定期的に登録審査が行われていますので、教育委員会の刀剣登録担当者の指示に従って審査を受けて下さい。当日『登録証』が交付されます。登録済みの刀剣類は誰でも所持し、研究観賞、展示、演武、研磨、売却などができ、また、以上の目的のために持ち歩くこともできます。
  『登録証』は大切な台帳に関わる書類ですので紛失しないようにしてください。持ち運ぶ場合には携帯が義務付けられています。
 祖先が遺した刀剣類を保存し、未来に伝えていくためには、幾つかの措置が必要です。錆がある場合には錆が広がらないように研磨を施し、その後は新たな錆が出ないように、年に数回刀剣油を塗布するお手入れも必要です。また、古く汚れた鞘に入れたままでは錆が出やすいため、研磨を施すのであれば保管用の白鞘を新たに製作する必要もあります。
 刀剣は人間の寿命を超えて数百年の間生きてきた美術品です。これら刀剣類を、不用意な管理で錆びさせ、価値を低下させてしまうことに、私達はもっと敏感になるべきです。
 刀剣類に興味がない方、あるいは諸事情があって刀剣を保管することができない場合には、次の所持者に委ねることも一つの方法でしょう。つまり、刀剣に興味のある方への売却です。
 実際には、刀剣店などで売却する他、刀剣専門のオークションを利用する方法もあります。刀剣の価格には確かな相場がありますので、相場や真偽の判定に暗い個人間での売買はトラブルの元になりかねません。
 いずれの場合においても、信用のおける刀剣専門店にご相談されることをおすすめします。

提供:株式会社TKC(2005年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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