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生鮮食品を取り巻く環境の変化に対応して、平成16年6月に「卸売市場法の一部を改正する法律」が施行されました。この改正の主なポイントは、以下のようなものです。
(1)取扱商品の品質管理の高度化
(2)商物一致規制の緩和
(3)関連事業者の事業活動に関する規制の緩和
(4)卸売市場の再編促進
(5)仲卸事業者の財務基準の明確化
(6)市場取引の情報公開の充実
このうち、まず(1)では「O―157」やBSE(牛海綿状脳症)、鳥インフルエンザといった近年の生鮮食品に関する様々な問題の発生を踏まえて、消費者の生鮮食品に対する安全面での信頼性を高めることを目的としています。また、トレーサビリティやHACCPといった食品流通に関する新しい仕組みの導入を促進することも視野に入れたものといえます。
次の(2)〜(4)が、今回の改正における最も重要な点になると考えられます。まず(2)ですが、これまで「品質や規格の統一がしにくく、貯蔵性がない」という生鮮食品の特性により、市場内に現物を搬入して取り引きを行わなければならないという「商物一致原則」がありました。しかし、IT技術やインターネットの普及に伴って、こうした最新の技術を有効に活用するため、ある一定の基準を満たせば、市場内に現物を持ち込まなくても取引を可能にする緩和策が盛り込まれました。
(3)と(4)は、こうした時代の変化を踏まえて、卸売市場と、そこで活動する卸売業者や仲卸業者の活性化を狙ったもので、一定の条件下で、「買付集荷の自由化」や「第三者販売や直荷引きの禁止規制の緩和」、そしてこれまで一律に決められていた「卸売手数料の弾力化」(準備期間5年間の後)といった方針を打ち出しています。
今回の法改正で、卸売業者は経営体質の強化のために業務内容の多角化をはかることが可能になります。また、卸売市場自体も、取扱高の大きな「中核型」の市場、他市場と連携して共同集荷などに取り組む「ネットワーク型」市場、そして地元の作物を地元に供給する地域密着の「地産地消型」市場などのような、それぞれの個性を打ち出した大胆な改革が行われると予想されます。
(5)と(6)に関しては、こうした自由度を高めた卸売市場の運営を行っていくにあたって取引業務や事業者の経営内容の健全性、透明性を高めるために、情報公開などの基準をより明確にしようという主旨を打ち出したものです。
業界の再編と淘汰が進む?
今回の改正により、具体的には、卸が仲卸を経由せずに小売りや外食に直接商品を納入したり、仲卸が卸会社を通さずに産地から仕入れたり、あるいは電子商取引で産地から直に小売りに出荷するといった活動が可能になります。そうした独自のサービスに応じて、料金(手数料)を自由に設定できるようになり、これはメリットといえます。
しかし、同時に市場原理に基づき取引先のニーズに即したビジネスを行う業者が有利になるため、業界の再編と淘汰が進む可能性が出てきます。商品を見きわめる力だけでなく、卸売業者には取引先に対する企画力や提案力といった能力が求められるようになるでしょう。
いずれにしても、今回の改正は、生鮮食品の生産者及び消費者のニーズの変化を踏まえたものであり、時代が求める要請として真摯に受けとめ、対応をはかっていくべきだと思います。
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