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代理店政策をとるにあたって、まず考えるべきことは、自社商品は販売代理店側から見てどう映るかということです。ぜひ売らせていただきたいと申し出る企業が列をなすような状況が想定されれば、その中から安定的に売る力があり、かつこちらに有利な条件で契約できる相手を選択すればいいわけです。
しかし、逆に類似する商品がすでにあり、代理店の候補となる企業にとって「取扱商品の1つ」となってしまうような状況であれば、こちらから「いかに取り扱うことにメリットがあるか」をわかりやすく説明し、かつ積極的に売り込んでいく必要があります。どうしても作り手側には商品への思い込みがあるので、「これはよそにない売れる商品」と甘く評価しがちですが、ここはまず冷静に自社商品について評価することが大切です。そして仮に商品に差別化ポイントがあっても、販売する企業から見て「売るメリット」を感じられる条件が提示されなければ「積極的に売ろう」という姿勢にはならないことも認識しておくべきです。
そのうえで大切なことは、競合となる商品とその代理店との関係をよく知ることです。どの競合企業はどんな条件でどこの販売店と契約しているのかを知ることで、自社のとるべきスタンスは見えてきます。もし競合との比較で明らかに不利だと判断した場合、まったく別のルートを考えてみるのもいいでしょう。例えば商品がパソコンのソフトウェアの場合、システムの販売会社を代理店と考えるだけでなく、事務機器販社を攻めるという方法もあります。そして、闇雲に代理店にアプローチするのではなく、優先順位を付けて慎重に対応していくことが求められます。一般的には自社商品を購入する「エンドユーザー」を多く抱えている企業(代理店)の優先順位が高くなります。
販売代理店契約の内容
さて、具体的な条件提案の内容としては、(1)商品別の価格政策、(2)物流条件、(3)販促支援策、(4)代理店対応の体制、などがあります。取扱高によってその内容を変える場合は、その条件も明確にしておきます。
とくに(3)の販促支援策に関していえば、取り扱い開始時のみに手厚くしたいものがあれば、その期間を予め明示しておいた方がいいでしょう。また、その内容は商品説明会をはじめ営業の同行訪問、提案書等の営業ツールの提供など、いろいろな支援策が考えられます。そして代理店側にもどれだけの体制、活動量を期待するのかも明確にしておきます。
契約を結ぶにあたっては、担当エリアとこれに対する考え方もはっきりしておきます。例えば、本社は東京にあり、工場が名古屋にある顧客(エンドユーザ)の場合はどのように扱うかといったことです。そして万が一代理店間で問題が発生した場合には、どのように解決するかも決めておけばリスク対策になります。ちなみにエリアが異なるからといって、特定の代理店のみに特別な条件を出すべきではありません。代理店間で情報交換され、信用を失ってしまうなど、後でやっかいなことになる恐れがあります。
代理店制度を展開するにあたっては、お互いの信頼関係が基本です。一緒にビジネスに取り組んでいくうえで、相手の責任者が人間的に信頼できるかどうかを見極めることが求められます。
こうした点に注意して取り組めば、自社商品を全国ベースで販売することができるでしょう。
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