Q&A経営相談室
【労務管理】
社員の余分な残業を減らすには
 
Q:
 一所懸命働いてくれるのは助かるのですが、社員の毎月の残業代がどんどん増えていて困っています。極力残業を減らしたいのですが、よい手はないですか?(雑貨卸売業)
 
<回答者> 社会保険労務士 山本礼子

A:
 残業は多くの会社で行っていることですが、労働基準法で実施ルールがあることが意外に知られていません。
 そもそも労働基準法では、1日8時間、1週40時間(10人未満の商業など特例事業場は1週44時間)以内が基本の労働時間となっています。労働時間には休憩時間を含みませんので、午前9時から午後6時までの勤務で休憩1時間という会社の場合、1日の労働時間は基準内の8時間となります。
 この1日8時間、1週40時間を「法定労働時間」といいますが、法定労働時間を超えて働いた時間分が割増賃金を支払う必要のある残業ということになります。
 法定労働時間を超えて残業させる場合には、法36条により、時間外労働・休日労働協定(いわゆる「三六協定」)を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。この届出をすることで、労働時間以上の労働をさせることが認められます。
 三六協定の中では時間外労働する時間について労使で協定を結ぶわけですが、平成11年4月の法律改正によって上限の制限が設けられました。

<時間外労働の制限>
一般労働時間制の場合労働の制限 

期間の区分
限度時間
  1週間   15時間
  1ヵ月   45時間
  3ヵ月   120時間
  1年   360時間

 上限時間は表のとおりで、一般労働時間制の場合、1ヵ月あたりの残業時間は45時間が上限となります。このため、社員が45時間を超えて残業を毎月しているようですと、人件費が増えるだけでなく法律にも違反していることになってしまいます。過労死も年々増えていて、残業が100時間以上毎月続いているケースなどは労働災害と認定されています。
 ですから、人件費削減・業務改善と、労働者の健康を維持していくという2つの目的から、管理職と社員全員に残業時間の削減にともに取り組むよう、社長から働きかけをしていくのがよいかと思われます。

残業を減らす具体的手法

 具体的には、まず社内の上限残業時間を1ヵ月あたり45時間以内の何時間にするのかを検討します。そしてそれが例えば30時間ということになれば、30時間を上限とする三六協定を締結し、周知徹底します。就業規則にも、30時間を超えることが明らかなときには、事前に上司に相談することという規定を入れるとよいでしょう。
 さらに、残業管理表を作成して各社員に残業時間と業務内容を記入してもらいます。上司にはその残業が必要であったのか時間や方法は適正であったのかを管理指導してもらいます。

 このような残業時間の管理と改善をしていくと、ある程度は残業時間数を抑えることができます。
 また、人件費削減という観点から言えば、1日8時間の勤務ではなく、所定労働時間が9時から5時の7時間の会社の場合は、法定の8時間を超えたところから、つまり6時以降だけ割増賃金(通常賃金の1.25倍)を支給すると規定することも可能です。
 ただし、この場合は5時から6時までは通常の賃金の時給、6時以降は割増賃金という2つの残業計算をしなければならないので、管理と給与計算が煩雑となります。しかし、塵も積もれば山となりますので、面倒でも分けて残業計算をしている会社もあります。
 このほか、ノー残業デーを設けたり、人事考課や目標面接を実施して、残業が多い人の評価を下げていくといった方法も改革につながります。

提供:株式会社TKC(2004年12月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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