Q&A経営相談室
【税  務】
電子申告・納税システムの概要
 
Q:
 今年6月から全国で運用が開始された電子申告とはどのようなものですか。また、従来の申告手続きとは何が違うのでしょうか。(食品卸売業)
 
<回答者> TKCシステム開発研究所
  第一電子申告システム技術部 水野典明

A:
 政府は、2001年から世界最先端のIT国家を目指した「e―Japan重点計画」を発表しています。ITの活用で国民の利便性向上と行政の事務効率化を図るための具体策を定めたもので、広範囲にわたって内容も詳細化されてきています。今年、政府のIT戦略本部が公表した最新の計画では370の施策が掲げられました。
 今後は様々な分野で対応されていくことになると考えられますが、国税の分野では今年6月から全国でその取り組みが開始されています。これは、各種税務手続きをインターネットで行えるようにするもので、いわば税務行政の電子化・ネットワーク化です。
 電子的にできるものは、(1)所得税、法人税、消費税の申告(2)全税目の納税(源泉所得税や電子納税証明書の発行手数料の納付を含む)(3)青色申告の承認申請や納税地の異動届等各種申請・届出等になります。
 これまでは紙で作成した法人税申告書などを税務署に持参するか郵送していましたが、これに加えて、会社や自宅のパソコンで作成した申告書データを、一定の型式に変換しインターネットを通じて税務署に提出することが選択できるようになっています。
 インターネットで申告手続きを行うため、電子申告では特にセキュリティ面で二重、三重の対策がとられています。その1つが、書面で申告書を作成・提出する際の印鑑に代わる電子証明書を使った電子署名です。電子証明書とはインターネット上で本人であることを電子的に証明するもので、「住民基本台帳カード」(住基カード)などに書き込まれている公的な個人認証データです。この電子署名は、本人確認だけでなく送信データの改ざん防止にもなっています。
 また送信に際しては、税務署から取得した利用者識別番号(ID)と暗証番号の入力が必要となります。さらに、インターネット上で第三者から見られないようにするため、SSL(Secure Sockets Layer)という最新のデータ暗号化技術が用いられています。これらにより、利便性と安全性を同時に実現しているわけです。

電子申告の開始には余裕を持って

 所得税、法人税、消費税などの電子申告は、ほとんどの場合、顧問税理士と連携し進めることになります。具体的には、1.市町村からの電子証明書(住基カード)の取得→2.税務署への開始届出書と本人確認書類の提出→3.税務署からのID等の取得→4.国税受付システムへの電子証明書やIDなどの事前登録→5.申告データの作成と電子署名→6.電子申告、という流れです。
 ここで注意すべき点は、開始届出書の提出から利用者識別番号等の取得まに最長で2ヵ月ほどかかることです。例えば来年の所得税確定申告(2月16日〜)を電子申告で行う場合、今年の11月中には税務署に届出書を提出しておく必要があります。電子化を検討されている方は、早めに顧問税理士に相談されることをお薦めします。
 最後にメリットですが、現状では源泉徴収票や医療費の領収書といった添付書類を別途郵送する必要があるなど、電子申告だけを見た場合、残念ながら従来より際だって簡便になるということはありません。もちろん今後、これらは改善されていくでしょうが、さしあたっては、電子納税などとあわせて利用するのが便利でしょう。電子納税とは、インターネットバンキングを利用することで、銀行窓口へ行くことなく会社のパソコンから源泉所得税などを納税できるものです。
  インターネットを通じた行政サービスの提供は、国税分野以外にも徐々に広がっていくことが予想されます。それらを利用するための準備作業としても、電子申告への積極的な取組みは有効だと思われます。 (インタビュー・構成/「戦略経営者」・千葉博文)

提供:株式会社TKC(2004年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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