Q&A経営相談室
【人事戦略】
定年後も契約社員として雇うには
 
Q:
 定年退職者のなかには高度なスキルを持つ人がいます。引き続き契約社員として働いてもらうためには雇用契約上、どういう点に注意すればいいのでしょうか。(機械製造業)
 
<回答者> 社会保険労務士 山本礼子

A:
 年金の支給開始年齢が徐々に引き上げられていることもあり、定年退職後の社員を契約社員や嘱託社員として再雇用する企業が増えています。定年後の再雇用とは、定年によりいったん退職した人と、改めて労働契約を結ぶことをいいます。
図表1  第○○条(定年)

 社員の定年は満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって自然退職とする。
2 会社は、定年に達した者でも業務上必要がある場合、本人の能力・成績および健康状態などを勘案して選考のうえ、嘱託社員また契約社員として期間を定めてあらたに再雇用することがある。ただし、再雇用期間は、○年を限度とする。

 再雇用制度を導入するにあたっては、就業規則で図表1のように「定年の条項」に再雇用のある旨を記載するとよいでしょう。この規程例では希望者全員を再雇用するのではなく、その中から会社が選考し、決定した人だけ再雇用するものとなっています。なお、現時点では65歳までの再雇用は会社の努力義務で、希望者全員を再雇用しなければならないという義務は法律上ありません。
 ただし、平成16年6月に高年齢者雇用安定法が改正されたことで、定年が現在の60歳から65歳に引き上げられます。具体的には平成18年4月から段階的に図表2のようなスケジュールで、(1)65歳までの定年の引き上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の廃止――のいずれかの措置が義務づけられます。
 また、再雇用契約をする際には、勤務内容・勤務時間・休日・給与・契約期間などについて再雇用契約書を、会社と労働者で結びます。契約期間については、労働基準法の満60歳以上労働者の特例により5年契約まで可能ですが、1年契約を更新して、更新回数を何回までと定める形も可能です。さらに、契約期間や給与・賞与・退職金など一般社員と異なる扱いも多いので、嘱託社員就業規則を作成するとよいでしょう。

「社会保険」上の留意点

 一方、社会保険(健康保険と厚生年金)に関しては、勤務時間と勤務日数が正社員と比較しておおむね4分の3以上であれば、定年退職後も加入しなければなりません。社会保険に加入する場合は、給与と年金の額に応じて在職老齢年金の計算により、年金が減額となります。現在は少なくとも2割の年金がカットされます。
 さらに、給与月額(賞与込み)が48万円以下で、年金月額28万円以下の場合は給与と年金の合計額が基準額の28万円を超えると、超過額の2分の1がカットされます。なお、年金改革によって平成17年4月から一律2割カットはなくなり、給与と年金の合計額だけカットされるようになります(図表3参照)。また、在職老齢年金のほかにも、60歳時点の給与に比べ75%未満に下がっている場合は、再雇用社員には雇用保険から「高年齢雇用継続給付」という給付金が「月給×最大15%」支給されるので、給与を下げても収入減をカバーできます。

 希望者全員の定年年齢や継続雇用年齢の引き上げをする際には、会社がもらえる「継続雇用定着促進助成金」を活用されるとよいでしょう。

提供:株式会社TKC(2004年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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