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テレビに取り上げられることの反響には、すさまじいものがあります。確かに、テレビであなたの店舗が紹介されれば、それこそ信じられないくらいのお客さんが来店してくれるはずです。しかも他の宣伝方法とは比べものにならないくらいの即効性があります。仮に営業時間中にその番組が放映されれば、番組が終わらないうちにお客さんが集まり出すでしょう。これがテレビに出ることの最大のメリットです。
たとえ3分程度の放映であっても、放送の翌日には店舗の前に長蛇の列ができることは間違いありません。テレビに出ることの実に素晴らしいメリットです。しかし、落とし穴もあることに十分留意しなければなりません。
テレビに出れば、店の前には行列ができるのは確かですが、これが続くのは3日間だけです。3分という短時間だろうと45分の放映だろうと、基本的には行列ができるのは3日間だけと思ったほうがいいでしょう。多忙を極めるのはおそらく1週間。1ヵ月後には閑古鳥が鳴いているということも少なくありません。これがテレビで放映されることの怖さなのです。
よく誤解されますが、テレビを見て行列に並んでくれたすべてのお客さんが、その店のファンということではありません。100人並んでいたら80人まで、「テレビで言っている割にはおいしくなかった」などと否定的な見方をしていると思ったほうが賢明です。
そこに気がつかず、「テレビに出たらこんなにお客さんが来てくれた。これでもう、うちの店は安泰だ。大船に乗って左ウチワだよ」と判断してしまうところに甘さが生まれてしまうのもまた事実です。
オンリーワンになることが先決
単に「テレビ取材を受けて、自分の店を宣伝したい」と考えるのはあまりにも短絡的で、甘いといわざるを得ません。テレビだけでなく新聞や雑誌を含めてマスメディアに取り上げてもらうためには、何より3つの意味があることを肝に銘ずるべきでしょう。
第1に自分の作っている商品なり製品を広く世に問いたいという社会性。第2に他の商品・製品との違いを明確にしたいという斬新性。第3に商品・製品づくりに対する自分自身の姿勢や信念を理解・共鳴してもらいたいという共感性。
これらの3要件が備わっていることがテレビに取り上げてもらう最低条件といえます。テレビ取材を受けて集客効果を高め、売上や利益を伸ばしたいという、最初から販売促進の狙いがあるなら、それこそ安易な発想です。
私自身、自らテレビに売り込んだわけではありません。純粋においしい無添加パンを世に広めたいという一心でパンづくりに励んできたことが評価された結果なのです。他では真似のできないもの、それが無添加パンであり、私にとってのオンリーワンでした。
パンづくりのプロとして、「最高の材料を厳選して使用し、焼き立てのものを提供する」ことは当然なのは言うまでもありません。その上で、例えば毎年、敬老の日には近くの老人ホームにアンパンやメロンパンを100個ずつでもプレゼントすることです。毎年、決まった日に養護施設へプレゼントするといったことでもいいでしょう。
まずどうしたら自分の店が社会に貢献できるかを考えて実行することが先決です。社会から注目されるオンリーワンのパン屋さんになれば、こちらから無理に売り込みをかけなくても、メディアの側から取材に訪れるに違いありません。新聞が取り上げ、そしてテレビが取り上げてくれる。そうした連鎖的な反応が期待できるのです。 (インタビュー・構成/ジャーナリスト・川上清市)
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