Q&A経営相談室
【営業戦略】
ITを使った日報の活用法とは
 
Q:
 最近、ITを使った「電子日報」を導入する企業が増えていると聞きますが、そのメリットと活用法について教えてください。(日用雑貨卸売業)
 
<回答者>NIコンサルティング 長尾一洋

A:
 パソコンの普及に伴い、従来の紙の日報からITを用いた電子日報に移行する企業が増えています。紙の日報では期待できない様々なメリットが得られるからです。電子日報はSFA(セールス・フォース・オートメーション)と呼ばれるソフトウェアによって簡単に導入できます。
 電子日報の主なメリットには、(1)「商談履歴を時系列で追える」ということがあります。紙の日報が商談の断面図しか見えないのに対し、電子日報なら時系列に整理して商談の流れ全体を追うことができるのです。
 さらに、その顧客ごとの商談履歴や顧客情報を、(2)「グループウェアの機能を通じて社員みんなで共有化できる」という点も、電子日報のメリットの1つといえます。紙の日報のときには営業部門内の上司と部下の間でしか共有していなかった様々な情報を、必要に応じてどの社員も知ることができるわけです。例えば、新人営業マンが先輩が手掛けた商談の成功・失敗要因を分析することで自分自身の営業スキルの向上に役立てるといったことが行えます。商談ノウハウの「ナレッジマネジメント」が実現できるわけです。
 また、ルートセールスのなかで営業マンが知り得た顧客からの要望やクレーム内容を、電子日報を通じて開発部門や製造部門のスタッフも簡単に把握できるようにもなるでしょう。

チーム全体で戦えるようになる

 グループウェアで日々の日報を共有化できるということは、紙の日報のときのように回覧にかかる時間など必要ありません。それによって、(3)「複数の上司たちが日報を通じて現場営業マンに有益なアドバイスを送れる」という効果が得られることになります。
 紙の日報だと、現場の営業マンが提出した日報を直属上司→課長→部長などの順に回覧していると、コメントが書き込まれたものが本人の手元に戻ってくるまでは数日かかります。上司の出張が重なった場合などは1週間以上になるでしょう。ところが電子日報ならば、営業マンが日報をアップした時点でどの上司も見られるため、すぐにコメントを返せます。出張先からでもネットに接続できるノートパソコンがあればそれが可能です。
 迅速にコメントを返せることにより、次回の商談までに営業マンにとって有益なアドバイス、例えば「今度はこういった資料を持っていくと説得力が増す」「その折衝をする際にはあの人がキーマンとなる」といったことを複数の上司が教えられるようになります。つまり、チーム全体で営業マンの指導・サポートが行えるようになるのです。好景気の頃とは違い、今は質の高い営業をしなければ商談はものにできません。個人の能力に頼るだけでなく、チーム全体の知恵で戦うことが重要となります。その際に電子日報は有力な武器となるはずです。
 このように電子日報は、営業マンの行動管理の意味合いが強い紙の日報とは明らかに異なるものといえます。電子日報を効果的に活用するには、こうしたメリットを最大限に活かせる社内体制を確立することが求められます。
 コンクリート製品の製造・販売を手掛ける岡山県のR社は、営業マンが吸い上げた顧客ニーズを電子日報を通じて開発部門にフィードバックする社内体制を築いたことで、斬新な自社商品を次々と世に送り出しています。その代表例が、河岸の斜面を固定するのに使われるカゴ型のコンクリートボックスで、「従来のコンクリートで塗り固めてしまう方法では生態系に影響を及ぼすため別の方法が望まれる」というユーザーの声にもとづき開発しました。この商品は現在、同社の収益拡大に大いに貢献しています。こうした事例は全国にいくらでもあります。工夫しだいでどの企業でも実現可能といえるでしょう。

提供:株式会社TKC(2004年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
▲ ページトップへ戻る