Q&A経営相談室
【危機管理】
特許権侵害に対抗するための確認事項
 
Q:
 同業の機械部品メーカーから特許権を侵害されました。対抗措置を講ずるにあたってまず何をすべきかを教えてください。(機械部品製造業)
 
<回答者>弁理士 酒井昭徳

A:
 昨今、特許権を含む知的財産権を自社の大切な財産と位置付け、その権利の有効活用をはかろうとする風潮が高まってきています。また2005年4月には知的財産権の訴訟を専門に扱う知財高等裁判所が設立されることになっており、今後、知的財産権、特に特許権の侵害訴訟の増加が予想されています。
 自社の発明について特許を取得した場合に、特許権者(自社)はその特許発明の実施を専有することができます。したがって、自社の特許権が侵害された場合、即ち特許発明にかかる技術について他人による実施行為(製品の製造・販売など)が自社の許可なく行われた場合には、その実施を中止させるべく差止請求が可能となります。またその他人の実施によって損害を受けた場合には、その他人に対して損害賠償請求が可能となります。
  ここで、同業の機械部品メーカー(相手方)による特許権の侵害に対して対抗措置を講ずる前に、その相手方の実施行為が本当に自社の特許権侵害に該当するのかを慎重に判断しなければなりません。特許権者が侵害だと思い込んでいるケースの半数以上は、実際は特許権侵害に該当していないといっても過言ではないのです。そして、もしも判断が誤っていた場合(即ち相手方の実施行為が特許権侵害に該当しなかった場合)、今度は逆に相手方からこちらに損害賠償請求がなされることがあります。したがって十分な注意が必要です。

特許権侵害を判断する

 まず、自社の特許権が現在も有効であるかどうかを確認します。登録料の未払いなどによって特許権が消滅していないかを確認してください。次に、特許請求の範囲に基づいて自社の特許発明の技術的範囲を確認します。また、特許権侵害に該当する相手方の製品(侵害品)を特定します。そして、両者を比較し、相手方の製品が特許発明の実施に該当するか否かを確認します。さらには、相手方が本件特許発明の実施行為をすることを許されている者であるかどうかも併せて確認します。
 なお、これらの判断は専門的であり、かなり難しい場合が多いので、できれば弁理士や弁護士などの専門家に相談して判断してもらった方が間違いがありません。

「まず話し合い」が得策

 確認の結果、相手方の実施が自社の特許権を侵害している場合には、まず相手方と話し合いの場を持つことをお勧めします。相手方の言い分を聞くことで、よりよい関係を築くことができる場合が多いからです。また、もしかすると自社製品の製造・販売が相手方の特許権を侵害しているかもしれません。そうなると、かえって自社が損害を受けてしまうことにもなりかねません。このように、互いの利害を十分に考慮しつつ交渉するのがよいと思います。
  話し合いの場が持てない場合、あるいは話し合いが決裂した場合には、訴訟手続きを進めてゆくことになります。その際には、まず訴訟に先立って、相手方に対して警告状を送ります。そしてその後、相手方の出方を考慮して、訴状を提出することになります。
  訴訟手続きを行うとなると、場合によってはかなりの訴訟費用が必要になり、決着がつくまでに多くの日数がかかることもあります。したがって、あらかじめ訴訟手続きを依頼する弁護士に訴訟費用の概算や今後のスケジュールなどを確認しておくとよいでしょう。

提供:株式会社TKC(2004年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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