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ご質問のケースは店舗に備わっていた設備を所有した場合なので、当然、減価償却の対象も「既設の設備」になります。減価償却費を計算するには、その資産の(1)種類等、(2)取得日及び事業供用日、(3)取得価額、(4)耐用年数、(5)減価償却方法、を確定させることが必要です。以下、それぞれについて説明いたします。
(1)種類等の確定
中古店舗に備わっていた「既設の設備」については、前の所有者(廃業した同業者)から固定資産台帳、償却資産の申告書などを入手し、記載されている内容から建物付属設備、什器備品などの資産の種類、さらに空調設備工事や照明設備工事、造作工事といった構造用途、細目を確定させます。余談ですが、通常、契約の締結前に、これらの資料をもとに資産の実在性、使用可能性などについての調査が行われます。また、新規に設備工事を行った場合には、その見積書、請求書などから用途や機能等を単位とし、種類等を耐用年数表から確定します。
また、賃借物件(店舗)に行った造作工事については、その構成物(例えばガラス戸、ショーウィンドー、カウンター、天井、壁、床など)にかかる工事のすべてを一つの資産とします。
(2)取得日及び事業供用日の確定
減価償却はその資産を事業の用に供した日から開始します。ただ取得しただけでは償却開始はできません。ご質問の場合は開店日等、実際に店舗を使用し始めた日になるかと思われます。
(3)取得価額の確定
個々の資産の細目ごとに取得価額を確定させます。既設の設備について契約で設備一式いくらと定められているような場合には、未償却残額などを使って購入価額を合理的に各資産に配分計算し、取得価額を確定させる必要があります。新規の設備工事を施した場合には確定した資産の細目ごとに見積書、請求書などを集計して取得価額を確定します。そして、確定された取得価額をもとに資産計上するか、費用計上するかを吟味します。(注:ここでは取得価額は時価として適正額と仮定します)
(4)耐用年数の確定
耐用年数は資産の種類、細目ごとに耐用年数表において定められています。したがって種類、細目が確定すれば、自動的にその資産の耐用年数が確定します。ただし、造作工事については、異なる用途や使用材質の数種類の資産が一つの資産を構成していますので、総合耐用年数の算定方法に準ずるなどの方法で耐用年数を見積もります。既設の設備の場合、法定耐用年数(新品取得した資産に適用されるもの)によるか、残存耐用年数(使用可能期間として見積もられる年数で中古資産についてのみ適用されるもの)によるか、事業の用に供した事業年度において、いずれかを選択できます。
残存耐用年数は以下のように計算します。A.法定耐用年数が全部経過したもの……法定耐用年数×20%(1年未満の端数切捨て、その年数が2年に満たない場合には2年
Bについても同様)。B.法定耐用年数の一部が経過したもの……法定耐用年数−経過年数+経過年数×20%
(5)減価償却方法の確定
定額法又は定率法によることになります。定額法によるか、定率法によるかの選択は事業所単位で行うことができますので、もし取得した資産について今までと違う償却方法を選択するときは、その店舗を設けた日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに「減価償却資産の償却方法の届出書(注:変更の届出書ではない)」を納税地の所轄税務署長に提出することになります。 |