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50代のサラリーマンに、定年後の就労意識を聞くと、「働くつもりはない」と答える人は12.8%にすぎず、働くことを考えている人が合計86.6%にのぼります(現代総合研究集団調べ)。最近、65歳までの定年延長の議論がさかんになってきました。しかし、大企業の管理職がその恩恵を被ることは難しいのです。なぜなら中高年の管理職ポストは、できるだけ早く後輩に譲ってほしいというのが大企業の本音だからです。大企業は、定年前に個々の社員を見ないし、誰ができるかできないか、意欲があるかないかをチェックしません。それをやりだしたら、きりがないからです。定年という制度で一律に処理する。だから、「できる」意欲のある社員が放出されるのです。
加えて、最近の役職定年制度の普及も優秀な大企業OBが市場に放出される大きな要因になっています。
ポイントは「専門性」と「相性」
では、大企業OBのどこを見れば、失敗を防げるでしょうか。4つの点が重要です。まず、調子はいいけど専門性がない社員は避ける。これまで長年やってきた仕事のスキルだけが、市場でそれなりの競争力を持ちます。これまでのその人の仕事の経歴を調べ、長期に従事した仕事があるか。売り物として、特定分野の専門性があるか。それらが高いレベルの質をもっていたなら、大丈夫です。
筆者の転職者調査では、大企業での専門性は、同一業務分野では中小企業向けに通用する場合が多くみられました。もちろん、その場合、ノウハウや知識を、その現場の実状に応じて、加工して応用することが求められます。
それから第2の条件として、これまでの大企業意識を払拭して、新しい職場で一からやっていける人材であるか。それをみるには、子会社への出向経験を確認することです。親会社から離れると、周りの目も態度も変わり、そこで一種の意識革命をせざるをえなくなります。それを一回やった人と、そうでない人では中小企業への適応力が違います。
第3は、経営者、つまりあなた自身との相性です。結婚と一緒で、こればかりは、どうしようもありません。1時間も話せば、長年の勘から相性は判断できると思います。単に採用するのと違い、相手もプライドを持っており、それをうまく利用できるかが重要なポイントです。もちろん、初めは合っても、その後合わなくなることもありますが、今それを心配しても、仕方ないでしょう。
第4に、在職中に接触した人々と良好な関係を保っているかどうかが大事です。大企業でのある意味自動的な仕事の配分と異なり、中小企業では、「あの人に頼んでみよう」という相談や発注が来るような人間的魅力がより問われるからです。
さて、大企業OBを採用するメリットは2点あります。ひとつは、低コストで雇えること。早期退職金等をもらった後は必要収入がダウンするので、低価格で雇うことができます。中小企業の支店長でも、400万円という例もあります。肩書きは必要ですが、年収は個別契約なら、会社にとって価格競争力が確保できます。
第2は、OBの持つルートが使えることです。元の会社、元の取引先からの受注はもちろん、人脈を活かした他からの受注も期待できます。元の会社からの受注は、パイプがあるうえに、これまでにその人の信用がわかっているので、先方も発注しやすいのです。その他の営業活動も、これまでのつながりを使ったほうが効率的なのは間違いありません。
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