Q&A経営相談室
【危機管理】
ネット上に自社商品の悪評を書かれたが…
 
Q:
 有名サイトの掲示板で自社商品の悪評を書かれました。事実に反する部分もあり、やめさせたいと考えています。対処法を教えてください。(うどんチェーン店)
 
<回答者> 牧野総合法律事務所 弁護士 牧野二郎

A:
 有名サイトの掲示板に悪評を書かれるという事態は多くなっています。こうした掲示板は誰でも自由に、思ったことを書けるため、様々な意見や誹謗中傷内容が書かれます。大きな話題になった場合には、「スレッド」と言うグループが作られて、関係する話題を集中させることもあります。こうして、話題が盛り上がった状態を「おまつり」などということがありますが、多くの場合は一過性の、無責任な誹謗中傷騒ぎになります。
 かつて有名生命保険会社がこうした掲示板内で誹謗中傷された事件があり、仮処分申請の結果、書き込みの削除を求める決定が出て、沈静化したことがありました。仮処分の申請から決定まで半年以上の期間がかかったこと、その間は書き込み自体は削除されないこと、新聞報道などされて周知される結果になったなど、積極面と消極面が指摘されています。
 こうした書き込みに対して、どのような対処が必要か、という問題ですが、まず、内容に根拠がなく、抽象的内容に終始している場合は影響力も小さいことが多く、損害が生じないことも多いのです。話題になるといった程度で、プラスに作用することすら考えられます。この場合も、書かれた本人には心外で違法だと訴えることがあります。しかし第三者の目で見た場合には違法性の程度は低く、正当な批判や感想という程度であって、法的問題とならないケースも多いのです。こうしたときには、冷静に様子を見守り、違法な書き込みに及ぶようなことがないかを注目することが重要です。
 次に具体的な事実が指摘され、強く批判される内容が書かれている場合ですが、こうした内容の時には事実が重要な意味を持ちます。まったくの虚偽の事実を書いた場合には信用毀損行為として刑事事件ともなります。また、強いインパクトを持つでしょうから、仮処分や損害賠償請求も必要でしょう。この場合には、書き込み内容と、書き込んだ人を特定し、削除依頼を行い、応えないときは制裁を加えると言う対応が必要になります。
 こうした書き込みの場合に注意が必要なのは、事実の虚偽性を明確に立証できるか、という点です。掲示板の書き込みも表現行為ですから、表現の自由という視点から保護の対象とされています。従って、批判の自由という面があり、事実に基づいて、公益を確保する目的で、かつ公益に資する場合には、その批判は適法だとされます。こうして批判される内容について真実であるか、公益のためかどうかを議論することになるのですが、ここで手間取ると仮処分申請をしても審理が長引き、下手をすれば申請自体が却下されるといったことにもなりかねません。
  対処方法を検討する場合には、まず、批判内容を正確に把握すること、そしてそこに書かれている内容が事実かどうか、虚偽である場合にはその虚偽性を裏付ける証拠、資料が十分に収集できるかどうか検討する必要があります。同時に、その発言、書き込みの影響力を正確に見る必要があります。様々な視点から悪影響がおきていること、その大きさを客観化して説明できるようにしなければなりません。裁判官が納得できるような内容として説明できるか、と言うことです。
 どうしても削除させたい場合、行動の第一歩はプロバイダーや、掲示板主催者に対する削除依頼を行うことです。書き込まれた内容を指摘して、管理者権限で削除するよう求める必要があります。それでも消されないときには、発信者情報の開示を求めて、書き込んだ人に対する仮処分などを申請することになります。

提供:株式会社TKC(2004年7月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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