Q&A経営相談室
【環  境】
経産省が進める「環境JIS」とは
 
Q:
 最近「環境JIS」という言葉をよく耳にしますが、従来のJISとどう違うのか、また、どういうメリットがあるのか教えてください。(機械メーカー)
 
<回答者> ジャーナリスト 木全 晃

A:
 ご存知のように、JISは日本工業規格の略称で、鉱工業品そのものや加工技術を標準化するための仕組みです。お尋ねの「環境JIS」は、そのエコロジー版といえます。
 従来のJISには、約9000の規格が設けられており、基準を満たした高品質の製品や技術は広く国内外に発信されてきました。ところが、昨今は品質だけでなく、「環境」というキーワードがビジネスに加わりました。
 温暖化をはじめ、廃棄物処理や化学物質による汚染などがクローズアップされるにつれ、環境への負荷を低減するような製品や技術が一躍注目されています。環境省によると、環境関連のビジネス市場は2010年に40兆円規模にのぼると推計されています。
 しかし、環境保全に貢献する製品やビジネスは新しい分野だけに、従来のJISでは十分にフォローし切れません。なかには、「環境に優しい」というキャッチフレーズが一人歩きをし、実際の効果が疑わしい製品も見られるなど、市場そのものの信用が損なわれるという懸念も出てきました。
 そこで経済産業省は、「環境JIS」という括りで、従来の規格の改定や新規策定に乗り出したわけです。環境JISは、リサイクルが進み、資源が循環するような環境配慮製品やその加工技術、有害物質の統一された測定技術などを標準化するものです。
 規格の第1号は、都市ごみの焼却灰を主原料とした「エコセメント」で、2002年7月に定められました。昨年1月には、シックハウス対応の建材に関する規格も制定されています。今後、改正される規格も加えると、200件以上のテーマで整備が進んでいます。

他社との違いを打ち出せる

 誤解されがちですが、環境JISというマークや認定制度が新たに設けられたわけではありません。従来のJISでは、700弱の指定商品等に限って、これを安定的に供給可能な事業所がJISマークを製品に表示することを許可しています。あくまで環境JISは、従来のJISマーク表示を環境保全面で補足するものといえます。ちなみにJISについては、今国会で見直しが議論されています。経済産業省によれば、今後は指定商品に限らず、既に制定したJISの対象品目であれば、広くマークの表示を認めようという方向にあるようです。
 次に、中小企業経営への影響を、もう少し具体的に見てみましょう。
 今年1月、光触媒に関する初のJISが制定されました。光触媒は、空気や水質の浄化、脱臭、抗菌など様々な環境浄化機能を持つため、環境配慮製品への活用が急速に進んできました。ビル外壁用タイルなど、国内の市場規模は400億円ともいわれています。
 今回、定められた環境JISは、光触媒を用いた製品の空気浄化性能を試験する方法についてです。どの程度の窒素酸化物が除去されるかなど、測定の仕方が明確化されました。
 このため、従来は「空気を浄化する光触媒を使った新商品」という謳い文句で差別化を図ることができた企業も、JISに基づいて、製品の優劣が評価されることになります。従ってメーカーは、環境JISに沿った測定方法を製品開発に取り込み、その枠内で性能を高めれば、今後は他社との差別化が容易になるわけです。これは他の環境JISについても同様です。
 光触媒の環境JISは、国内だけでなく、ISOの国際標準にも組み込まれる模様です。もともと、国が環境JISに注力する背景には、欧米や中国と競ううえで、日本発の標準化をいち早く進めようという狙いがあります。

提供:株式会社TKC(2004年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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