Q&A経営相談室
【生産管理】
生産管理導入の基本的な手法は
 
Q:
 「生産の効率化をはかるために生産管理の導入を考えています。基本的な手法を教えてください。(機械部品製造業)
 
<回答者> 日本能率協会コンサルティング シニアコンサルタント 松本賢治

A:
 従来、生産の効率化は、材料を大量に仕入れて、まとめて作り、製品の在庫をもって顧客の要求に対応するという手法で行われていました。しかし最近は製品種類の増加、製品の短ライフサイクル化、短納期化が加速し、「まとめれば安くなる」という考え方が通用しなくなっています。何をいつどれだけジャスト・イン・タイムで作るか、つまり生産管理の良し悪しが生産の効率化を大きく左右するということです。
 生産管理とは基本的に、製品や部品の販売予測情報や注文情報をもとに、(1)何を、いつ、どれだけ、どういう順番で作るか、(2)材料や仕掛品、完成品をどれだけ在庫するか、(3)ものづくりに必要な材料や人、設備をいつどれだけ確保するか――といった計画を作って、それを実行し、計画通りに進んでいるかをチェックし、遅れなどがあればそれを取り戻すための計画を作成し、実行するという管理の仕組みです。
 したがって、生産管理の導入は一言で言えば「どんな計画を作り、それをどのように実施させ、どう統制するか」ということになります。

生産管理構築の2つの手法

 まず計画機能では、どれだけ工場を稼働させるかという操業計画(操業日数、操業時間)、材料や部品、中間製品、完成品をどれだけ持つかという在庫計画、生産を行うのに必要となる能力計画(生産場所の決定や作業人員計画、設備計画)、どのタイミングで何を作るかという日程計画(3ヵ月計画、月次計画、週次計画、日次計画、作業スケジュール等)を決めます。次に実施機能では、どのような作業指示を行い、生産の実績をどう収集するかという仕組みを決めます。統制機能では、実際の生産が計画通りに行われているかの進捗管理をどのように行い、計画を逸脱した場合にどう対応するかの仕組みを決めます。
 実際に生産管理の仕組みを構築するうえで重要なのは、会社のものづくりを的確に把握してそれにあった仕組みを構築することです。
 それには、大きく分けて2通りの方法があります。1つは生産管理のやり方を決めて、自社にあったシステムを一から作りあげていく方法です。もう1つはパッケージソフトといわれる出来合いの仕組みを購入し、それを自社にあわせてカスタマイズ(直していく)する方法です。
 中小企業の場合は、資金がない、システムを構築するスタッフがいない、ものづくりを行うためのルールや作業標準が不明確、生産の実績や仕掛・在庫などが正確に把握できていない、といった問題を抱えている企業が多く見受けられます。
 こうした場合には、次のようなことを考える必要があります。
 第1に、いきなり情報システムの構築やパッケージソフトの導入を行わず、まずどのような生産管理を行い、その際の業務の流れや個々の内容をどう行うかを決めます。
 第2に、できるだけシンプルな生産管理を行います。
現状の業務をそのままシステムに置き換えようとすると、時間も資金もかかり、できたとしても現在のいろいろなやり方をそのまま仕組みに置き換えるため複雑なものとなり、現場でそれを使う人がめんどうくさがり活用されなくなります。
 第3には、すべてをコンピューターで行わないことです。例えば部品展開、在庫計算等の大量のデータ処理はコンピューターで行い、特急品の生産指示や応授援指示等のイレギュラー対応はまずは人で行う、という具合です。コンピューターで行う部分と、人で対応する部分をうまく切り分けなければなりません。

提供:株式会社TKC(2004年4月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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