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小は家庭での小遣い交渉から、大は国家間の外交交渉まで、すべての交渉ごとは情報戦争です。正確で豊富な情報をもっている者が圧倒的に有利になります。まずは、交渉に必要な情報を集めておきましょう。
収集しておくべき情報は、概ね次の3点です。
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自分側についての情報
……売上高や粗利益率の推移、原価、顧客数の推移など |
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相手側についての情報
……納入先の数、生産原価、粗利益率などをわかる範囲で |
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業界の状況や今後の予測
……平均的な仕入価格、飲食業界の景気予想など |
情報を集めたら、次に交渉の目標ラインを設定します。たとえば、従来より仕入価格が3%下がれば利益率が確保できるという状況なら、これを目標ラインとします。ただし、相手との交渉時にこの数字をそのまま提示したのでは、3%確保はむずかしくなります。3%ダウンなら、それに若干上乗せして4%ダウンを提示価格とします。
また、交渉ごとでは、対案や代替案を用意しておくことも鉄則になります。それがないと、交渉が難航した場合、立場が弱くなり、譲歩を余儀なくされることがあります。
仮に、交渉の過程で目標の3%ダウンが2%で決着しそうな気配になってきたとしましょう。その場合は、「2%ダウンでけっこうだが、その代わり、従来品に加えて、コレコレの品物をこの値段で納入してほしい」というふうに条件をつけます。
取引交渉では、相手が納入価格ダウンを飲むどころか、経営が苦しいからと、逆に値上げを要求してくることも考えられます。そういう状況では最悪の場合、交渉決裂、取引停止ということもありえます。そうなってからあわてないように、あらかじめ新しい仕入れ先を想定しておくことも必要です。
以上のような条件や対策は、交渉の過程を予測して、状況に合わせていくつか用意しておきます。そして、こうした準備ができたら、実際に交渉するための段取りとなります。
たいていの交渉は、一方が提案し、他方がそれに対する別の案=対案を出すという形で進んでいくのが普通です。そこで、どちらが最初に提案するかが問題になります。それによって成果が大きく違ってくるからです。
一般的にいうと、企画、依頼、説得など、主導権をもって交渉しなければならない内容の場合は、自分が先に提案します。そうしなければ、交渉が始まりません。
いっぽう、ご質問のような売買取引、商談、利害調整などの場合は、相手に先に提案させたほうがトクです。相手の提案を先に聞くことによって、相手の条件や状況が察知できるからです。
交渉における4つの鉄則 |
○まず情報を集める |
○交渉の目標ラインを設定する |
○対案・代替案を用意する |
○相手に先に提案させる |
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たとえば、この交渉では、「コレコレの状況で、従来の仕入価格ではどうしてもやっていけないので値引きしてもらいたいが、どうでしょう」と切り出します。相手が、こちらの目標値である3%ダウンを提示してくれば、1回で決着します。また、4%ダウンを提示してくれば、交渉は大成功ということになります。
逆に、1%ダウンしか飲めないと提示してきたら、こちらは「4%ダウンでないとやっていけない、場合によっては仕入れ先を変えることも考える」と提示します。こうしたやりとりを何回かしながら、目標の3%ダウンで折り合うようにもっていくのです。
交渉中は、こちらの提案に対して、相手が拒否したり、非難したりすることもありますが、感情的にならず、あくまでも冷静に対応するようにしましょう。
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