Q&A経営相談室
【会  計】
普及すすむ「中小企業の会計」とは
 
Q:
 中小企業会計基準に則った決算書は金融機関の信用を得やすいと聞きました。中小企業会計基準とはどういうものなのか、その概要をお教えください。(建設業)
 
<回答者> 城所総合会計事務所 税理士 城所弘明

A:
 中小企業が自社の経営力を強化するため、自社の経営の現状や課題を分析することは重要です。その際、適正な会計のルールに基づき、正しい財務状況を反映している決算書を作成することが前提となります。
 一方、近年のデフレ経済下において、担保や個人保証に偏重した融資制度が行き詰まりを見せています。こうした中で、中小企業自らが決算書の信用力を向上させ、資金調達力の強化につなげていくことの重要性が高まっています。
 このような問題意識のもと、中小企業庁において、中小企業にとって望ましい会計のあり方として「中小企業の会計」が策定されました(「中小企業の会計に関する研究会報告書」2002年6月)。これは、資本金1億円以下の株式会社であって、当面の株式公開を予定していない会社を対象に、個別項目ごとの会計処理のあり方を具体的に設定したものです。

基本的な枠組み

 「中小企業の会計」の骨子は、以下のとおりです。
1.中小企業が行うべき事項
 これまでは、税法の影響を強く受ける傾向にあった項目のうち、債権者等の信頼を得るという観点から、中小企業といえども実行すべき会計処理項目を明確にしました。例えば、減価償却については「毎期継続して、規則的な償却を行う」とし、商法上の義務を明確にしています。
2.中小企業においては任意でよいものとされる事項
 企業規模による属性の違い、負担可能なコスト、決算書の目的等を考慮し、中小企業にあっては、任意で適用すればよいと考えられる事項を明らかにしました。例えば、税効果会計に係る会計基準や固定資産の減損に係る会計基準等については、基本的に任意適用としています。
3.中小企業においても行うことが望ましい事項
 キャッシュ・フロー計算書や「注記事項」については、商法上の義務として求められていないものの、金融機関等の信用力を高める観点からは、作成することが望ましいとされています。

質の向上にむけた取り組み

 「中小企業の会計」の公表以後、政府をはじめ中小企業団体、会計専門家、金融機関等において、その普及・定着に向けた取り組みが広がってきています。
 特に、日本税理士会連合会では、「中小企業の会計」をより具体的・実務的に示す指針として「中小会社会計基準」を提示しました。そして、それに基づいて作成された決算書の事後的チェックのために「中小企業会計基準適用に関するチェック・リスト」を作成し、普及に取り組んでいます。さらに、一部の金融機関においては、顧問税理士によるこの「チェック・リスト」の添付があった場合に、債務超過であっても融資の対象とする等、入口要件や融資条件において一定のメリットを付与する金融商品の提供が始まっています。

「中小企業の会計」の入手方法

 中小企業庁では、「中小企業の会計」を解説し、問答集の形にした小冊子『中小企業の会計35問35答』を広く配布しています。この小冊子をご希望の方は、中小企業庁財務課(電話03-3501-5803)までご連絡下さい。
(中小企業庁のホームページhttp://www.chusho.meti.go.jp/からのダウンロードによる入手も可能です)。

提供:株式会社TKC(2004年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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