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「駅ナカ」とは、各鉄道会社が駅構内のスペースの有効活用や、提供する商品・サービスの見直しを進めているという「新しいトレンド」を総称した言葉で、昨年暮れの「日経ヒット商品番付」にも採り上げられ話題となっています。
従来とは異なったさまざまな業種やブランドの店舗が出店し始めた駅ナカですが、結論から先にいうと、現状では外部の個人店や中小チェーンが駅ナカへ直営店を出店できる可能性は非常に低いといえるでしょう。
もともと駅の建物というのは商業テナントを誘致するために造られたものではありませんから、駅構内は一般の商業ビルのように賃貸用のテナント区画に区切られてはいません。したがって、駅構内(改札の内側)に鉄道会社の系列以外の企業が店舗を構えれば、管理上の問題から、いろいろ面倒な事態が発生することが考えられます。
また、交通機関である駅構内の構造は利用客や鉄道会社自身の使い勝手が優先されるため、例えば店舗のすぐ近くにあった入口や階段、エスカレータなどがある日突然閉鎖になったり、別の場所に移転したり、駅の工事のために長期間使えなくなったりするという事態が発生する可能性もあります。駅(=鉄道会社)としては、そのたびに店舗に営業補償などを行うわけにはいきません。
駅ナカ店舗というのは、こうした事情によって、通常のテナント契約のような賃貸契約を締結することはなかなか難しいのです。
FC方式であれば可能性がある?
現在、駅ナカに出店しているのは、各鉄道グループの系列会社が運営する店舗が中心です。有名なブランド店舗が出店している場合も、その多くがフランチャイズ方式、もしくはそれに類する契約形態を取っているようです。
JRなどを中心に鉄道各社が駅ナカの有効活用に力を入れはじめ、新しい店舗スペースが増えつつあるのは事実ですが、駅ビルのような商業施設とは違って、駅構内という限られた範囲で多くのテナントスペースが発生するわけではありません。前述したような事情もあって、現状では外部の一般店舗を賃貸テナントとして誘致するという考え方は少ないようです。
こうした中で、あえて駅ナカへの出店可能性を検討するとすれば、商品供給や店舗の運営委託までを含めたフランチャイズ方式の契約があります。ご質問者の方は洋菓子店を経営しているとのことですが、その店舗の商品と店名がブランドとして十分な知名度や集客力を持っていれば、フランチャイズ契約による店舗商標の提供と、商品供給を行うという形での出店は考えられます。ただし、ご質問者の店が、少なくとも地域では大多数の人々が知っている有名店でなければ難しいでしょうし、他社には真似のできない独自の商品を持っていなければなりません。
また、当然ながら出店案件は一般公募されませんから、鉄道会社との付き合いがあり、そうした情報をいち早く入手し、あなたの店を紹介・推薦してくれる内装会社やコンサルタントなどに人脈を持つことも必要です。
現状では、まだ駅ナカに対する考え方も鉄道各社によって異なっているようです。JR東日本のように駅ナカビジネスの専門会社を設立したところもあれば、首都圏のある大手私鉄では駅ナカの具体的な開発計画がないところもあります。
まずは、自社店舗のブランド知名度を高めること、そして人脈を広げ、情報収集することから始められてはいかがでしょうか。
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