Q&A経営相談室
【社員教育】
接客サービスを劇的に改善する秘訣は
 
Q:
 地方都市で、居酒屋と弁当店などを経営しています。一時は繁盛していたのですが、最近はどの店も停滞気味で、知人に評判を聞くと「接客が悪い」と言われました。どうしたら改善できるでしょうか。      (飲食業)
 
<回答者> 商業環境研究所代表 入江直之

A:
 伸び悩む個人消費の影響から「接客サービス」の重要性が見直され始めています。狭い国土に数多くの店舗がひしめいているわが国では、商品や価格での差別化には限界があり、リピート客確保には「接客」による顧客満足度の向上が重要な要素の1つです。
 接客サービスの技術は、追究すれば非常に奥深いものですが、ここでは個人店や小規模チェーンが明日にでも始められる改善活動について述べます。
 まず、接客サービスで最も重要なポイントは「タイミング(Timing)」と「優先順位(Priority)」そして「対象・目的(Object)」の3点であるということを念頭においてください
 どんなに気の利いた言葉でも、ちょっとした「タイミング」の違いで「余計なお世話」になる可能性がありますし、「優先順位」をわきまえない接客は不愉快なだけです。そして、何よりも「誰のために、何のために」という基本を忘れた接客サービスには何の意味もありません。これを筆者は「接客サービスのTPO」と呼んでいます。
 このことを踏まえたうえで、従業員のサービスレベルを向上させるために、次の2つの目標に沿って改善を進めます。

意識改革とロールプレイング

 まず第1は、実際に顧客と接する従業員1人ひとりの意識改革です。「なぜ接客サービスの向上が必要なのか」といった接客サービスの考え方を正しく理解させるために、ミーティングや研修などで従業員とのコミュニケーションをはかります。従業員に「マニュアルではなく、自分の考えで接客する」ための意識を植え付けていきます。このときに大事なことは、例えば「身だしなみは社会人の常識」などといった建て前論を振りかざさず、「特異な服装や化粧は内輪の仲間以外の人たちを拒否する意図が感じられるから、不特定多数のお客様を相手にする商売には不向き」といったように、理詰めでキチンと説得することです。オーナー自らが、こうした受け売りではない顧客満足のあり方をしっかりと確立していかなければ、従業員のレベルアップは望めません。
 2番目は、ロールプレイングなどの手法を使った接客トレーニングの定期的な実施です。ミーティングや研修を通じてどんなに接客について理解していても、実際の現場で、必要な動作や会話が瞬時に出てこなければ何の意味もありません。基本用語を朝礼でただ復誦するといったおざなりな活動ではなく、顧客との間に日々発生する様々な応対の中から重要な場面を拾い出し、従業員全員で、より良い対応を議論しながら実際に繰り返し演技してみるといった、地道なトレーニングを積み重ねる以外に接客サービスを高めることはできないのです
 これらのことは、店長に「やっておくように」と指示を出して済ませるようなものではありません。経営者自らが個々の従業員に対して語りかけ、従業員自身が「自分たちは、この店の顧客満足度を向上させるために重要な立場にある」という自覚と誇りが持てるように導いていくことが必要です。
 また、接客サービスの改善を行うにあたっては注意しなければならないことがあります。従業員が接客の手法を「押し込み販売のテクニック」として身に付けてしまい、その場の売上を上げることに熱中してしまうと、そのときは良い気分で帰った顧客も、後から「結局、高い買物をした」と感じてしまうことがあります。これではかえって客足を遠のかせ、逆効果となってしまいます。特に衣料品店や居酒屋など嗜好品を販売する店舗では、こうした結果に陥らないために、従業員全員が正しい「顧客満足」の意味を理解するよう心がけることが大切です。

提供:株式会社TKC(2004年2月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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