Q&A経営相談室
【税  務】
新証券税制下での確定申告の留意点
 
Q:
 個人資金で株式投資を行っています。「源泉徴収なし」を選択し、今回、確定申告を行うのですが、手続き上の留意点を教えてください。(不動産業)
 
<回答者> 日興コーディアル証券 証券税制相続サービスセンター長 遠藤清孝

A:
 新証券税制はその概略だけでも大変に広範で、この誌面ではとても説明することはできません。そこで今回は、特に問い合わせの多い3項目にポイントを絞り解説いたします。

1.取得価額不明の株式を売却した

 いつ、いくらで取得したのかが不明な株式を売却したというケースは、結構多いようです。税の対象となる売買損益は株式を売った金額と買った金額との差額ですから、買った金額(取得価額)が不明だと税額を計算できません。そうしたときは「みなし取得費の特例」を利用します。これは、平成13年9月30日以前に取得した上場株式等を、15年1月1日から22年12月31日までの間に譲渡した場合には、選択により、その上場株式等の13年10月1日における終値の80%相当額を取得費とすることができる、というものです。
 たとえば、同一銘柄で(1)取得時期、価額共に不明な株式2000株と(2)14年4月に1株280円(総平均法・後述)で取得した株式2000株を昨年譲渡したとします。仮に(1)のみなし取得費を250円(13年10月1日における終値の80%相当額)とすれば、その取得価額は(1)50万円+(2)56万円=106万円となります(便宜上、(2)の手数料と消費税は省略)。
 この特例では、当該株式が13年9月30日以前に取得されたことを証明する必要もありません。ただ、証明するものがあるのでしたら、念のため保存しておいたほうがいいでしょう。

2.複数回に取得した株式を売却した

 次に売買損益を計算しますが、ここで注意しなければならないのが同一銘柄を複数回に分けて取得した場合です。たとえばA社を300円時と200円時にそれぞれ1000株ずつ計2000株買い、その後1000株を売ったとします。当然同じ銘柄ですから、300円の株と200円の株のどちらを売ったのかを厳密に判別することはできません(手数料・消費税省略)。
 こうしたときには、それぞれの取得価額の平均額で売ったとする「総平均法に準ずる方法」で算出します(図1参照)。つまり、損益を小さくするため「今回は300円の株式を売った」といった扱いはできないわけです。

3.妻も株式投資を行っている

 奥さんが株式投資を行っている方も少なくないと思います。配偶者などの株式等の譲渡所得等は、ケースによって扶養者控除や配偶者控除等各種控除の適用要件に影響する場合がありますので注意が必要です。
 簡単に説明すると、配偶者等が確定申告をする場合は合計所得金額に含まれ、「源泉徴収あり」の特定口座で申告をしない場合は含めなくても良いことになります。ただし住民税については特定口座、一般口座、申告の有無にかかわらず、15年分の譲渡益は合計金額所得に加算しなくても良いことになっています。16年分以降は所得税と同様の扱いになります。
 このことはご主人の税負担に関係してきますので、事前によく理解しておく必要があるでしょう。

 税理士法の関係から証券会社が説明できるのは基本的な計算方法など、証券税制に関する概要に限られています。より詳しい説明や実際の申告手続きについての問い合わせは、税務署もしくは顧問税理士にご相談ください。                          

提供:株式会社TKC(2004年2月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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