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まず、教育の目的について考えてみましょう。それを一言でいうならば、「自立」させることです。親からの自立、仕事面での自立、社会の一員としての自立、これらの全てが企業内教育の範疇なのです。企業が活力を持ちつづけるには一日も早く一人前に育てる必要があります。それにはちょっとしたコツがあります。
1. |
何をしようとしているのか、行っているのかをよく見極めて言葉をかける。ボーッとしているように見えても仕事の段取りを考えているのかもわかりません。 |
2. |
教えるときには、達成すべき技術的水準、期間、報告必要の有無を明確に示す。複雑な内容や理解しづらい内容は書いて示す。 |
3. |
特に仕事の手順に係わることはマニュアルにまとめて渡す。 |
4. |
なぜそうする必要があるか、例えば、部品作製を頼む場合、どんな製品のどこに用いられるのかも説明する。 |
5. |
専門用語を使う場合は、その意味も繰り返し説明する。 |
6. |
自分の納得する言葉でしゃべるのではなく、相手の理解しやすい言葉を使う。 |
7. |
必ず、笑顔で相手の目を見ながら話す。何かをしながらでは、ことの重要性は伝わらない。 |
8. |
相手に話す前に、何をどのように伝えるのか、頭の中で内容をよく整理する。 |
9. |
「分からなくなった時はいつでも聞きにこい」と伝えておく。なぜそうするかというと、新米社員の素朴な疑問が商品開発や経費節減のヒントになることがよくあるからです。 |
10. |
報告を待つのではなく、積極的に進行状況を聞き、修正すべきことはそのときに教える。 |
早く自立させるには、教える側もそれなりの準備と心構えが必要なのです。
自分がこれまでやってきた手法がベストとは限りません。むしろ、パソコンを自由に使いこなす若者のやり方の方が理にかなっていることも少なくありません。ですから、「つべこべ言わす、俺の教えたとおりにしろ」と言うのではなく、教える側も頭を柔らかくして、教えられる機会を得たという気持ちを持つことも大切です。
しかし、いつもニコニコはしておれません。ときには厳しく言い聞かせる必要も出てきます。「叱る」ことと「怒鳴る」ことを混同されている方がいらっしゃいますが両者は全く違います。「怒鳴る」には感情的な高ぶりがあります。これに対して「叱る」は同じような大声を出しても心は冷静です。一種の演技のようなものです。
叱るべきときは、次の3つです。
1. |
集中力が乏しくなっている時
工場内や建設現場などでそうした状態にあると、重大な人身事故につながることがあります。
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2. |
同じミスを繰り返す時
ミスの最も大きな要因は、その作業内容を軽視していることにあります。そのときは、重要性をよく説き、2度と同じミスを繰り返さないという誓いをたてさせる必要があります。 |
3. |
何度も約束を守れなかった時
量的にも難度的にも問題がないとすれば、厳しく問い詰める必要があります。この場合は、退職されるかもしれないことも覚悟して諌めることです。企業経営は、約束と信頼の上に成り立っています。約束を守らない者の内包は、やがて企業の存立を脅かすことになります。ウソをつく場合は論外。即刻退職させるべきです。 |
叱るときには、相手の逃げ口をふさいではなりません。言い訳できる隙間を残しておくこともコツのひとつです。かける時間は短く、叱ったあとの、精神的なフォローも大切です。
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