A:
最近、ご質問者のように、「資金繰り円滑化借換保証制度」に対する関心が高まっています。この制度は昨年2月、中小企業の資金繰りを円滑化する目的で作られたもので、昨年10月末までの保証承諾件数は27万8588件、金額ベースでは4兆1992億円にのぼっています。「借換」とは、信用保証協会の保証の付いた既往の借入金を、新規保証の付いた借入金で返済することを指します。そのパターンは大別して2つあります。
1つは「特別保証」(平成10年に実施されたもので13年3月末に終了。保証実績は累計で約172万件、約28兆9000億円)の借換のケースです。この場合、借換時にセーフティネット保証(経営安定関連保証)の要件に該当する企業はセーフティネット保証で、該当しない企業は一般保証での借換になります。セーフティネット保証とは、取引先企業等の倒産、金融機関の再編等に伴う貸出の減少−−などによって経営の安定に支障をきたしている中小企業への資金供給を円滑化するため、平成14年初めにできた制度です。市区町村長から認定を受けます。
もう1つのケースは、一般保証またはセーフティネット保証の借換です。この場合も特別保証のケースと同様、借換時にセーフティネット保証の要件に該当する企業はセーフティネット保証で、該当しない企業は一般保証での借換になります。
どちらのケースも、(1)保証期間は10年以内(据え置き1年を含む)、(2)保証料率は、セーフティネット保証の場合は年0.8%以内、一般保証は年1.35%以内――などとなっています。ただし、特別保証の場合はすでに終了しているため、他の保証との一本化などはできません。
毎月の返済額を軽減できる
それでは、実際にどのように借換が行われているのかを事例で説明してみましょう。織物卸業を営むA社(年商4億9000万円)は、業況が厳しく直近3ヵ月の売上が前年に比べて13%減少していることから、セーフティネット保証(5号)の認定を受け、昨年8月借換保証制度を行いました。
同社は平成12年8月、特別保証で5000万円を5年返済の条件で借り入れました。約2年半返済し、借換申し込み時点での借入残高は約2500万円でした。それを今回、5年の保証期間で借り換えたことで、月々の返済額をそれまでの87万円から44万円に減らすことができました。
第2は一般保証の付いた複数の既往借入金を一本化させたケースです。計測機器メーカーのB社(年商約4億2000万円)はX銀行がメーンで2口、Y銀行1口、Z信用金庫1口の計4口で1億円の借入金(平均返済期間8年)があり、毎月の返済額は約127万円でした。そこで、B社では資金繰りを楽にする狙いから昨年9月に借換保証制度を利用しました。その時点の借入残高は約7000万円(平均返済期間約5年)。具体的には、一般保証の付いた既往借入金4口をX銀行に一本化させ、10年の保証期間で借換を行いました。これによって毎月の返済額を60万円にすることができました。
このように、借換保証制度を利用すれば毎月の返済額を軽減できるとともに、追加的に新たな融資にかかわる保証も受けることが可能です。ただし、それに甘んじることなく、その間に経営体質の改善に努めることが大切です。
|