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パワハラとは『職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超え、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること』であり、一言で言えば職権を使った“嫌がらせ”ということができます。
私たちが行った電話相談やウェブ上での意見募集にパワハラに苦しむ多くの声が寄せられていますが、「上司命令とは言え今まで釈然としないことが多かった。それがパワハラだったことが分かった」などのご意見をいただいています。
具体的な相談内容では「上司がいる間はいつ自分に雷が落ちるかわからないので皆ビクビクして、仕事がほとんど手につかない」「毎日のように罵倒され、何をするにも自信が持てず、本当にポカミスをするようになってしまった」「毎日説教が1時間以上。1人ひとり呼び出しては叱責を繰り返す」などがありました。そうした職場では、生産性が決して高くないことが容易に想像できます。仮に上司の時給が5000円、部下が時給3000円で10人いたとすれば、1時間の説教にかかるコストは3万5000円。月換算で70万円にもなります。説教によってそれ以上の利益を上げられるなら続ける価値はありますが、少なくとも社員が嫌がっていることをしても効果があるとは思えません。
このことから、現在、パワハラは変質的上司の個人的な問題としてではなく、組織の問題としてとらえられています。人事担当者を対象にしたアンケートの結果では、会社や組織内でパワハラがあると認識している人は83%、またパワハラは周りの従業員の士気を下げると思っている人は実に95%もあり、ほとんどの人がパワハラ問題は企業の生産性という観点から放置しておけない問題と考えています。さらに、「パワハラ問題に真剣に取り組むことは重要」(96%)、「マネジメント層の意識改革が必要(97%)、「組織風土改革が欠かせない」(96%)と、企業としての総合的な取り組みの必要性も認識されています。
まずは関心を持つことから
しかしながら、パワハラになってしまうことを恐れて部下を叱れない、リーダーシップを発揮できない管理者が増えるのも企業としては問題です。相談の中には、「好きな部署に就けない」「自分の意見が取り入れられない」など、単なるわがままや権利ばかり主張していると思われるケースも多々あります。こうした、仕事に対する考えが甘かったり、社会的マナーに欠けるタイプの部下に対してはキチンと叱って教育する必要があります。管理者としては少なくとも労働契約上の従業員の権利と義務について理解しておくとよいでしょう。
一方、管理者の方からは「何をしたらパワハラになるのか教えてくれ。わかればそれはやらないから」と聞かれます。しかし、パワハラになるならないは、お互いのおかれた状況(業界や職種など)や人間関係のあり方によって大きく違ってきます。そもそも部下に対して簡単にマニュアル対応しようとする姿勢そのものが、相手の人間性の軽視といえるのではないでしょうか。ですから「答えは目の前の部下がもっています」とお答えしています。
「何がパワハラになるのか」「部下とどう関わっていけばよいか」を真剣に悩むことが、パワハワをなくす第一歩です。そして何よりも大切なのが、経営者がパワハラ防止に関心を持っていると社員に伝えること。経営者は良きにつけ悪しきにつけ、社員の行動に絶大な影響を与えているのですから。
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