Q&A経営相談室
【新規開業】
信頼に足る事業・資金計画とは
 
Q:
 ある有望な技術を開発し、独立開業を考えています。その際の事業構想の立て方と資金計画策定の留意点を教えてください。(バイオベンチャー)
 
<回答者> 中小企業診断士 森下真一

A:
 事業構想における留意点は広範で多岐にわたり、重要事項のみでも個別事象をあげていくととても紙数が足りません。そこで、事業構想を具体化して行くうえで必須と言える「信頼に足る事業計画書」の作成についてご説明することと致します。資金計画(マネープラン)もこの事業計画書の欠くべからざる構成要素ですので、中で併せて触れさせていただきます。
 まず、事業計画書の内容に触れる前に「信頼に足る」とはどういうことか、事業計画書作成の二つの目的を確認しながら説明します。
 一つ目の目的は、これから事業を実行していく過程で、実際に様々な意思決定や行動を行っていく上での指針とすべく作成するということです。いわば内向きな目的とでも言うべきもので、実施段階でのマイルストーンとして、また、構想段階と現実とのずれなどを確認し、有効な経営判断を行う材料とするためです。また、計画段階においては頭の中にあるプランを記述することで、自身の計画を客観的に検証する事ができます。この過程を通して、計画の中の漏れや弱い点などを見つけだし、事前に手当てすべき点や注意すべき点を明確に認識し、計画としての有効性を高めます。
 二つ目の目的は協力者(資金提供者)を獲得するために作成するというもので、いわば外向きな目的です。当たり前のことですが、創業には資金が必要です。一般に技術系、開発系の製造業を創業し軌道に乗せていくためには、商業やサービス業よりも資金が多く必要となる場合が多いようです。この先行投資における必要資金は、設備に対する投資が大きいからと考えがちですが、実際には技術や製品を開発後、商品化され売上が立ち、現金として回収されるまでの運転資金の方が、はるかに大きい場合が多く見受けられます。投資や融資という形で資金の提供を受けるには、資金量に見合ったメリットや返済の確実性等を相手に提示できなければ実現しないことは言うまでもありません。
 「信頼に足る」とは上記二つの目的に照らして、有効であるという意味です。ただ単に頭の中にあるプランを記述するだけではなく、記述したものを上記二つの目的の観点から、十分に検証し、必要な修正や補強を行わなければ作成の意味はない、つまり事業構想における根本的な部分での留意点と言えます。
 では、事業計画書の中身ですが、これには決まった書式というものは有りません。これから行おうとする事業に関し創業者としての熱意や抱負という主観的な部分と、市場性や成長性、収益性等、事業の有効性等が数字で示される客観的な部分とで、構成してください。具体的な項目を上げれば、(1)事業理念とビジョン(事業の社会的な意義や有効性と将来展望)(2)事業コンセプト(「誰に(Who)何を(What)どのように(How)」という項目で事業の領域を規定し、事業理念とビジョンを担保する)(3)事業責任者(4)事業展開(ビジョンを達成していくための具体的な方法)(5)事業の協力者(出資者や技術等の提携者)(6)各種計画書(仕入や販売、運営経費など月次のものと、損益、貸借等年次のもの)(7)資金計画――等で構成されます。特に(6)(7)は客観性のある数字を積み上げていくことが重要で、事業が黒字化されるまでの期間をカバーしていなくてはなりません。
 具体的な計画書の作成方法や個別項目における注意事項などは東京商工会議所や中小企業支援センター等の創業支援窓口やインターネットサイト、ベンチャーキャピタルや金融機関の相談窓口等で、ひな形や見本とともに詳しい解説が用意されています。ご参照の上ぜひ自分の手で作成してみる事をお勧めします。

提供:株式会社TKC(2003年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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