Q&A経営相談室
【資金調達】
売掛債権を資金に変える「ファクタリング」の活用法
 
Q:
 最近、売掛債権を資金に変えるファクタリングが注目されています。近く当社も利用したいと思っていますが、その詳しい内容を教えてください。(食品製造業)
 
<回答者> ニュービジネスブレイン機構 代表理事 志村和次郎

A:
 ファクタリングとは、簡単にいえば企業の売掛債権をファクタリング会社に譲渡、売却して早期に資金化することです。同時に、リスクヘッジとキャッシュフロー経営の推進などに役立ちます。ファクタリング会社は大手都市銀行系の6社が主力で、銀行窓口に聞けば教えてくれます。
 最近、不況を反映して、このファクタリングに対する関心が高まり、ご質問者のように利用を考えている企業が増えています。そこで、ファクタリングの仕組みとそのメリットなどについて説明します。
 まずファクタリングの取扱規模は、平成8年度は1595億円でしたが、平成11年度には約4500億円となっています。わずか3年間で2.8倍に急拡大しています。
 その理由は、1つは大企業を中心に手形を廃止して事務の効率化を可能にする「一括ファクタリング」へのニーズが高まっていること。第2は、電子商取引の決済システムとしてファクタリングを採用する企業が増加していることです。つまり、大企業が中小企業を巻き込む形で急増しているのが最近の特徴といえます。
 実際、浜松市の大手自動車メーカーの下請け企業はこのファクタリングを活用したことで、銀行借入を完済するとともに、オフ・バランス化を進め、経営効率を高めることに成功しています。ちなみにオフバランスとは、貸借対照表(バランスシート)の外に出すことを指します。

リスクマネジメントに役立つ

 
ファクタリングの機能には、このように資産の資金化以外に、ファクタリング会社の信用調査機能と情報提供機能を活用できることも、大きなメリットといえます。
 ファクタリング会社は、クライアント(依頼人である取引企業)以上にその販売先であるカスタマー(顧客である支払人)の信用を重視しますから、企業にとってはよい顧客を増やせば、信用力が倍増します。

 情報通信系のベンチャー企業「A社」は自社の技術が米国の有力企業に採用されたことで、当初赤字でもファクタリングが可能になり、早期に経営基盤を固めることができました。
 また、ファクタリングの機能のなかで、重要なのが売掛債権の回収が不能になった場合、ファクタリング会社が回収リスクを負担する(償還請求権なしファクタリング)機能です。
 「この顧客(カスタマー)に販売してよいか」「与信金額はどのくらいか」といった与信管理を、企業(クライアント)に代わってファクタリング会社が行ってくれるわけです。これによって、企業側は新規取引先の開拓がやりやすくなるといえます。
 このように、ファクタリングには様々なメリットがある半面、デメリットもあります。まず、債権譲渡にあたっては、相手先(顧客)に譲渡承諾を得なければなりません。また、債権譲渡特例法の創設でやや改善されたとはいえ、いまだ登記の手続きは煩雑です。今後は、ネット登録による簡略化を実現させたり、「売掛金担保融資制度」における信用補完をファクタリングにも適用するといったインフラの整備が急がれます。
 企業側は、刹那的で、一時的な資金対策という視点でファクタリングに取り組むのではなく、自社のファイナンス戦略のあり方を見直す一環として、活用することが肝要です。

提供:株式会社TKC(2003年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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