Q&A経営相談室
【設備投資】
リースで設備投資を行う際の留意点
 
Q:
 新たな印刷機械をリースで導入しようと考えています。どのようなことに注意すべきでしょうか。 (印刷業)
 
<回答者> 印刷経営総研理事 中小企業診断士 森下真一

A:
 ご質問から「リース」による設備導入の特徴はご理解されていると思いますが、確認の意味を込め簡単に説明しておきます。
 リースとは「リース会社が、ユーザー(企業等)の希望する物件をサプライヤー(メーカー、販社等の事業者)から買い取り、約定の期間、約定のリース料を受け取り、ユーザーに賃貸する」契約です。税法による規制は別として、リース取引の範囲や内容を直接規制する法律はありません。
 リース契約には、金融性を重視したファイナンスリース、賃貸借性を重視したオペレーションリース、リースされた設備の保守までを範囲としたメインテナンスリース等様々な種類がありますが、ここでは、もっとも広く行われているファイナンスリースを基準にご説明します。
 ユーザーに替わって、リース会社が物件を購入しユーザーに貸し出す契約なので、レンタルと混同しがちですが、大雑把に言えば、レンタル会社は物件を貸し出すことを業務としているのに対して、リース会社は物件の購入をユーザーに替わって行う業務と理解すると良いでしょう。つまり、リース会社は「物を貸す」のではなく、「購入する行為(金と労力)を貸す」といえ、この事からリース契約には一般に以下の特徴があります。(1)リース期間の定めが必ずあり、中途解約できない(2)リース会社は瑕疵担保責任を負わない旨の特約がある(3)ユーザーに物件の保守、修繕義務がある。
 とは言え、前述のように「リースの範囲や内容を直接規制する法律は無い」わけですから、この(1)(2)(3)の特徴も合意の上変更することもあります。それでは以下取引の各段階で注意すべきポイントを説明します。

契約時
 当然の事ですが、あらかじめ契約書をよく読み、内容を理解することです。特に(1)物件の所有権(2)リース期間中の解約について(3)メインテナンス契約の有無(4)損害保険の内容、等を確認し納得できるまで交渉する姿勢が大事です。また、 サプライヤーの営業が、「リース会社は関連会社だから」などとリース契約の作成に関わってくる場合があります。原則として、リース契約はリース会社とユーザーの間で結ばれるもので、第三者であるサプライヤーはリース料の支払条件等について取決めをする立場ではありません。サプライヤーの営業がユーザーに有利な内容のことを口頭で約束する場合も見受けられますが、契約書の内容以外の約束はないと承知しておいてください。

物件納入時
 物件の引渡を受け、仕様や規格が契約通りのものかを検収し、瑕疵が無いことを確認するまでは、絶対に借受証に署名、捺印をしてはいけません。
 借受証を交付した後では瑕疵等が発見された場合、リース会社はユーザーに対し一切の責任を負わないので、ユーザーはそれを理由にリース会社に対し契約を解除したり、リース料の減額を請求することは出来ません。もし、物件の引渡時に、性能不適当等の瑕疵があった場合は借受証を交付しないで(契約に規定がなくとも)、直ちにリース会社およびサプライヤーにその旨を連絡することが大切です。
 リースの場合は、サプライヤーがリース会社の指定する場所に直接物件を納入します。ユーザーが物件納入の確認、仕様などの検収後、借受証を交付(署名、捺印)します。借受証の交付はユーザーからの「契約履行」の証となります。時に様々な理由で、物件の確認をせず借受証を交付してしまい、「物件の納入がなく、リース料金が引き落とされる(空リース)」トラブルもあるようです。

提供:株式会社TKC(2003年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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