Q&A経営相談室
【法  律】
ネット通販を行うための法律上の注意点は?
 
Q:
 ホームページ上で婦人服を販売したいと考えています。法律上の注意点を教えてください。(ブティック)
 
<回答者> 牧野法律事務所 弁護士 若槻絵美

A:
  インターネット上で物品を販売する事業者は、通信販売を行う販売業者として特定商取引に関する法律(特定商取引法)の適用を受けます。したがって同法が定める広告の必要表示事項をウェブ上に載せておく必要があります。主なものを紹介しますと、販売業者の氏名又は名称、住所及び電話番号、電子メールアドレス、販売業者の代表者、商品の販売価格、代金の支払時期及び方法、商品の引渡しに関する方法などです。
 また特定商取引法では、「誇大広告」、つまり著しく事実に相違する表示をしたり、実際のものよりも著しく優良・有利であると人が誤解するような表示をしたりすることを禁じているので注意が必要です。
 さらに「不当な表示」についてを、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)が禁じています。どのような表示が禁じられるのかについては、公正取引委員会が2002年6月に公表した「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」が参考になります。ポイントは4つあります。a)十分な根拠がないのに商品に効能があるかのように誤認される表示を行わない、b)販売価格、送料、返品の可否・条件等の取引条件の具体的内容を正確・明瞭に表示する、c)ハイパーリンクの文字列を明確・適正に表示する、d)情報の更新日を正確・明瞭に表示する、の4つです。

購入申込に関する注意点

 サイトのなかの商品購入の申込を受け付けるページでは、(1)有料の申込となることが購入者にわかるようにする、(2)購入者に本当に購入する意思があるのかを確認する、(3)購入者が申込の内容を確認・訂正できるようにする、の3点に配慮する必要があります。例えば「この内容で注文する」というボタンを押すと注文の意思表示となることを明確にするとともに((1))、「購入します」というボタンを押すと確認画面に切り替わり「○○を購入するのですね。よろしいですか」といった記載の後に、「確認」「変更」「取消」((2)、(3))のボタンが表示されるといった仕組みを設けることが求められます。
 (1)〜(3)が必要なのは、以下の理由からです。
 (1)と(3)については、特定商取引法で、「通信販売業者が顧客の意に反して売買契約の申込をさせようとする行為によって、通信販売における取引の公正及び購入者の利益を害するおそれがあるときは、主務大臣が改善の指示を行うことができる」旨が定められているので、その対策上、必要となります。  
 (2)については、購入者のパソコンの操作ミスによる注文間違い等の勘違い(錯誤)によって発生するトラブルを回避するために必要といえます。
 電子消費者契約および電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(電子消費者契約法)では、いわゆるBtoCの電子契約の場合、購入の意思表示に錯誤があると消費者に重大な過失があっても原則としてその契約は無効になってしまうのですが、例外として、「事業者が消費者の意思表示について本当にその意思があるのかどうか確認する措置を講じていれば、重大な過失のある錯誤の場合は無効とならない」と定めています。つまり、(2)の措置を適切に行っておけば、錯誤によるトラブルは軽減されるのです。
 例えば自分ではブラウスを1枚買うつもりだったのに、実際にはキーボードの操作ミスで2枚と注文してしまったという勘違いをしたお客様がいた場合でも、(2)の措置があれば、注文無効の申し出に素直に応じる必要はなくなります。

提供:株式会社TKC(2003年9月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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