Q&A経営相談室
【法  律】
“迷惑メール”にならないメルマガ発行の留意点
 
Q:
 ホームページで注文頂いた顧客に、メールマガジンを発行しようと考えています。聞くところによると、電子メールを規制する法律があるとか。メルマガ発行の際の留意点を教えてください。(オーディオ機器販売業)
 
<回答者> 牧野法律事務所 弁護士 若槻絵美

A:
 一度に複数の宛先に情報を発信することができる電子メールは、近年広告・宣伝手段として多用され、なかでも受信を望まないのに送られてくる電子メールは「迷惑メール」として社会問題となりました。裁判所が携帯電話利用者宛に無差別に迷惑メールを送信する業者に対してその送信行為の差止を認めた(平成13年10月29日NTTドコモ「迷惑メール」送信禁止仮処分事件決定)との新聞報道をご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。
 当時は迷惑メールを直接規制する法律はありませんでしたが、電子メールの良好な利用環境をめざし、昨年新たに「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」((1)法)が制定され、また「特定商取引に関する法律」((2)法)が改正されて、通信販売、連鎖販売取引及び業務提供誘引販売取引に関する電子メール送信を規制する条項が追加されました。いずれの法律も平成14年7月1日から施行されています。
 まずは電子メール送信に関する規制の内容をご説明しましょう。
 (1)法は、営業活動を行う者が個人に対し広告メールを送信する場合についての規制を定め、(2)法は販売業者等の事業者が消費者等に対し広告メールを送信する場合についての規制を定めています。両者はその法律の目的による若干の違いはありますが、基本的な考え方や電子メール送信者側に求められる事項は殆ど同じです。
 そのポイントは、(ア)事前に承諾を得ていない者に広告のための電子メールを送るときはその表題部に「未承諾広告※」と表示する、(イ)電子メール受信者から今後広告メールを送信しないよう請求された場合は以後送信してはならない、(ウ)イの請求を可能にするために送信者の氏名(名称)、住所、電子メールアドレスを明示する――の3点です。
 さらに、(1)法では架空電子メールアドレス(アルファベットや数字を組み合わせて作成した電子メールアドレスだが誰も電子メールアドレスとして利用していないもの)へ広告メールを送ってはならないとの定めもあります。

ポイントは事前承諾の有無

 さて、ご質問のメールマガジン発行の際の留意点ですが、メールマガジンの送信先が、貴社のホームページで注文した人で、電子メールアドレスの登録の際に広告メールを送信することにつき承諾を得ているような場合、(1)法や(2)法の適用対象とはならず、特段の問題はありません。
 しかし、たとえば懸賞に応募してきた人の電子メールアドレスに事前の承諾を得ることなく、メールマガジンを送付するような場合は、先述の3点を守らなければなりません。(1)法または(2)法に違反すると一定の行政処分(措置命令、指示、業務停止命令)の対象となり、これに違反した場合には、さらに罰金や懲役刑が科せられる可能性もあります。
 また、個人情報保護の観点から、本年4月、個人情報の適正な取扱いを一定の事業者に義務付けることを内容とする法案(いわゆる「個人情報保護法案」)が国会に提出されました。この法案の「個人情報」の定義によれば、電子メールアドレスは「個人情報」に含まれると考えられます。個人情報保護法が現在の法案のまま制定・施行されると、電子メールアドレスの収集時には、あらかじめその利用目的を通知・公表しなければならず、通知・公表した利用目的の範囲外の利用を行ってはならないことになります。
 この点(1)法・(2)法を遵守して「未承諾広告※」の表示を行うなどすれば、法令に基づく目的外利用であるから個人情報保護法違反とはならない、と説明されるのか否か、法案成立後の(1)法・(2)法との関係についての議論が気になるところです。

提供:株式会社TKC(2003年5月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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