Q&A経営相談室
【マーケティング】
新市場進出にあたっての「市場調査」の進め方
 
Q:
 新しい市場に進出することを考えていますが、その市場のことを全く知りません。市場調査の進め方について教えてください。(食品製造業)
 
<回答者> 東京総合経営 シニアコンサルタント 前田隆敏

A:
 市場調査は、対象顧客によって2つに大別できます。顧客が消費者である場合(消費財調査)と、顧客がプロである場合(生産財調査)の2つです。
 このご質問だけではどちらの市場に進出しようとされているかわかりませんが、今回は生産財市場の調査について、自社で行う場合と、専門の調査機関に依頼する場合の2つに分けてご説明します。
 まず、自社で行う調査ですが、文献調査からスタートします。一般の図書館は、ビジネス書は多くありませんが、企業情報などの辞典類は揃っています。専門の図書館では、中小企業事業団やJETRO(日本貿易振興会)の図書館が無料で活用できます。JETROは、当然貿易に関係する資料が多いのですが、海外の企業が日本に進出する際に使える資料も準備しているので、新しい市場に進出する日本の企業にも役立つ資料があります。また、その市場の監督官庁の図書館なども無料で使えます。
 その他の専門的な資料は、業界団体で閲覧できます。業界団体では市場の規模しかわかりませんが(企業名付きのシェアの資料はほとんどない)、その業界団体に加盟している企業名はわかるので、あとは、業界紙に問い合わせればおおまかにはわかります。調査を進める際には、その市場の川上(取引先)や川下(顧客)からも調べると、より市場がはっきりと見えてきます。
 文献調査の次は取材調査になりますが、一般の企業が行うには限界があると思います。業界団体の方や、業界紙の記者、その業界の人に聞いてみる方法などがあります。業界には、「業界通」と言われるような人がいる場合が多いので、その人が見つかるかどうかがポイントです。普通の人は、意外と市場全体のことは知らない場合が多いようです。

 調査してまとめる項目としては、
・「市場の規模(金額ベース、商品であれば数量ベース)」
・「市場の過去数年の推移」
・「参入企業とシェア」
・「市場の動向と将来予測」
・「上位企業の展開内容」
・「近時進出企業の動向と展開内容」
などがあります。

調査会社の限界を知る

 専門の調査機関に依頼すると費用は50万円から100万円はかかります。大手企業は、数百万円を投入しています。依頼する際は、最初に予算と知りたい情報をはっきりと伝えることが大切です。
 依頼する場合の留意点は、「何を調査するか」ではなく、「どういった情報が得られるか」をあらかじめ明確にする必要があります。当たり前のことですが、調査会社の提案書の中には、調査内容だけが詳しく書いてあるものが少なくありません。
 次に、調査会社の市場調査の限界を知っておく必要があります。ベンチャー企業で成功された経営者のコメントには「市場調査は当てにならない」というものがけっこう多いのですが、需要を造り出していく、いわゆる「需要創造型」の新規事業は、現在の市場規模、動向はあてになりませんし、調査会社の予測も全く当てになりません。調査会社の限界を知ったうえで進めていかれることをお勧めします。
 市場調査全般に関する留意点としては、市場調査は外的要因しかわからない、ということがあります。伸びている市場でジリ貧の会社もあれば、後退している市場の中で伸長している企業もあるということを考えに入れて進めた方がいいと思います。また、市場調査では、過去と現在のことしかわかりません。これは当然のことですが、多くの調査報告書は、このことに留意して書かれてはいません。これらのことに注意して、調査を実施されればいいかと思います。
最後に信頼できる市場調査機関として、矢野経済研究所(1958年設立、従業員172名)をご紹介します。<問い合わせは、03-5371-6908>

提供:株式会社TKC(2003年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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