Q&A経営相談室
【資金調達】
VCを利用する場合 発行済み株式の何%までならOK?
 
Q:
 近い将来、株式公開を考えています。資本政策の一環としてベンチャーキャピタルを利用したいと思っていますが、どれくらいまでなら構わないでしょうか。 (電子部品メーカー)
 
<回答者> TKCマネジメントコンサルティング 小出真嗣

A:
 ベンチャーキャピタル(VC)は、そもそも企業の未公開時に株価評価の低い段階で株式を取得し、株式公開後、株式を売却してキャピタルゲインを得ることを目的としています。基本的に、株式公開後も株式を持ち続ける可能性は少ないと考えられます。
 ただし、ベンチャーキャピタルも昨今は単に投資するだけでなく、経営指導をはじめとしたコンサルティングを行ったり、人員を送り込むなどして企業の株式公開を手助けしています。が、あくまでも目的は、早期公開を実現させて、キャピタルゲインを得るところにあります。
 さて、ご質問の件ですが、ベンチャーキャピタルを利用する企業側の基本姿勢としては、まず業績を伸ばしていくためにはどれだけの資金が必要であり、そのためにはベンチャーキャピタル(外部資金)からどれくらい調達するかという「事業計画」(資本政策)を立てることが重要です。
 具体的には今後5年間くらいの事業計画を作成します。この事業計画には事業内容、事業展開はもとより、売上・利益などの業績計画、その業績を達成するための必要資金額とその調達法、調達先、また各事業年度ごとのキャッシュフロー表などを作成します。
 あくまで企業側の資金ニーズに応じてベンチャーキャピタルの利用を考えるべきです。そして、その割合に関してはあまりこだわる必要はないと思います。
 直近のケースからいえば、新興市場、店頭市場ともに発行済み株式の「0〜5%」までが最も多いです。

VCを利用する注意事項

 ただし、ここで注意しなければならないのは、第一に資金調達のほとんどをベンチャーキャピタルには頼らないということです。その持ち株比率が全体の40%、50%というようないわゆる“ベンチャーキャピタル漬け”になってしまうと、株式公開後の株価形成に問題が生じてきます。そうならないためにも、将来浮動株となるベンチャーキャピタルだけでなく、取引先・金融機関など、安定株主になってもらえそうなところにも割当対象を拡大しておくべきです。
 例えば銀行系・生損保系のベンチャーキャピタルが引き受けてくれるのであれば、株式公開を機にその親会社の銀行、生損保に一部株式を譲渡して安定株主になってもらうよう取得時に約束してもらうのも、一つの方策です。
 また、最近は金融機関も株式所有に関しては条件がかなり厳しくなっていますが、例えば第三者割当増資を機に証券代行事務をしてもらう信託銀行などに話をもっていくことも有力な方法です。
 第二に、ベンチャーキャピタルに株式を持ってもらう場合でも、1社に集中させず、何社かに分散して持ってもらうことです。1社に集中させてしまうと、当然そのベンチャーキャピタルの影響力、発言力が強くなってしまい、企業の経営上自由度がなくなる恐れがあり、好ましくないからです。
 要するに、(1)ベンチャーキャピタルの利用はあくまで事業計画(資本政策)の一環として考えるべきで、その中の資金調達計画に沿って利用すること。(2)利用する時は何社にも分散して出資してもらい、1社に集中するのを防ぎます。(3)ベンチャーキャピタルの比率が全体の中で高くならないように、金融機関など安定株主になってもらえそうなところに「話」をつけておくことです。

提供:株式会社TKC(2002年9月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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