Q&A経営相談室
【人事制度】
目標管理制度で社員に高い目標を立てさせるには
 
Q:
 目標管理制度を導入したのですが、社員が低い目標ばかり立てて困っています。どうしたら社員の意識を変え、高い目標を立てさせることができるでしょうか。(学習塾)
 
<回答者> プライムコンサルタント 代表 菊谷寛之

A:
 やればやっただけ成果が上がった高度成長時代と違い、いまの泥沼不況下では、下手に手を挙げれば苦労することが目に見えています。当然社員は腰が引け、なるべく低い目標を立ててお茶を濁そうとします。単に目標を設定させ、後は突き放してしまう成果主義では、効果が上がらないのも当然でしょう。
 大切なのは、会社全体で取り組むことです。もともと目標管理とは、会社が進んでいくべき方向を示すビジョンを達成するための手段。だとすれば、まず、トップ・経営陣のビジョン・戦略が明らかにされないと始まりません。各人の目標はそこに向かって収斂されます。ここが定まらないままに、目標設定を強要しても、社員はうろたえるばかりでしょう。大枠での「なぜ」「何のために」が抜け落ちた目標設定は意味がないということを認識しておいてください。
 さて、ビジョンや戦略を明らかにした上で必要なのが、役割(成果)責任を、社員それぞれが把握する手続きです。会社全体の目標を達成するために行うべきことを、順次、管理職、リーダークラス、一般社員とブレークダウンしていきます。一人ひとりの役割責任を自己理解させ、自分の部門にはどういう役割があり、自分はどういう成果を出さなければならないかをあらかじめ考えさせるのです。こういうお膳立てをしておいて初めて、目標の設定に進むことができます。

上司の適切なサポートがカギ

 しかし、そうはいっても、具体的な目標の設定段階になると、社員は怖じ気づいてしまうかもしれません。そこで大事になるのは、上司による適切なサポートです。上司はまず、全体像を把握しながら、部下の能力に見合った目標レベルを測ります。
 部下は、様々な制約条件を考え出して、目標を低く設定しようとするでしょう。そこで上司は「そうではなく、こういう行動をとればできるはず」とてこ入れをするのです。つまり、具体的なノウハウを伝授し、部下の行動レベルを高める作業です。この場合、結果ばかりではなく、「適切な行動プロセスがとれたかどうか」も評価の対象にしておけば、より効果的でしょう。
 また、「低い目標を設定すると、評価の際に不利になり、高い目標を設定すると有利になる」仕組みを作り、それを明確にアナウンスしておくことも大事です。そのためには、目標の困難度を判定できる仕掛けを用意しておかなければなりません。
 たとえば、部下が立てた目標それぞれを、1.0(普通)、1.2(困難)、0.8(容易)といった困難度の数値で格付けし、最終的な達成度判定段階で、この数値を掛け合わせるのです。実際の評価は6ヵ月後になりますが、目標設定段階でも困難度の評価が行われることを予告しておきます。部下は、上司との話し合いのなかで、自ら立てた目標が低く不利になる、と認識すれば、目標レベルを高める軌道修正を行わざるを得ません。
 このような「話し合い」は、目標管理制度の全体を通して欠かすことのできないものです。前述のように社員が勝手に目標を立てるのでは効果は期待できませんし、上司が目標を押しつけるのでは単なるノルマになってしまいます。上司と部下が手を携えながら、目標に向かって進んでいくチームワークは、組織として絶対に必要なものです。できれば目標を決める前には、全スタッフ参加で目標検討会を開くべきでしょう。お互いに納得してはじめて、その目標に向かって全精力をつぎ込むことができるようになります。
(インタビュー・構成/「戦略経営者」・高根文隆)

提供:株式会社TKC(2002年2月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、TKC全国会は当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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