Q&A経営相談室
【社員教育】
幹部社員が新聞や本を読まなくて困っているのですが・・・
 
Q:
 経済新聞やビジネス書の類はもちろん、一般の新聞さえもろくに目を通さない経営幹部が大勢います。彼らの活字離れをなんとかしたいのですが…。(運輸業)
 
<回答者> 千葉経済大学短期大学部助教授 杉田あけみ

A:
 最近の活字離れは、若者だけではないようです。
 仕事に追われ新聞や本をじっくり読んでいるヒマなどないとか、仕事で疲れ果てているので新聞や本をじっくり読むのは無理、という声が多くの企業の経営幹部の皆さんからも聞こえてきます。
 「スポーツ新聞や週刊誌などにさっと目を通すのがせいぜい。あとは肩のこらない娯楽小説でも読むのが精一杯」――というのが、そういう人たちの本音のようです。また、「新聞や本を読む時代じゃない。今はインターネットで情報収集だ」と若者と肩をならべる方もいます。
 だからといって社長にしてみれば、「確かにそのとおりである。仕方ない」と手をこまねいているわけにはいきません。社長とともに会社の将来を見極めていく責務がある経営幹部には、新聞や本を読むことで、問題意識や思考力を高めてもらわなければ困るからです。
 新聞からは、経済や経営に関することはもとより、社会や業界の動き、科学や文化に至るまで、仕事に直接・間接的に必要な多くの知識を得ることができます。 こうして得た知識を、経営幹部がビジネスに活かしていけば、取引先との商談も進み、ビジネスチャンスは増します。また、「うちの会社の幹部たちは仕事以外にも造詣が深い。よし、自分も」といった具合に、一般社員の自己啓発に好影響を与えることも期待できます。
 そうした傾向が強まれば、「ビジネスについての知識・情報はいうまでもなく、文化面にも精通している社員が揃っている会社」と評判になり、営業活動などへの好影響も期待できます。そのためにも、経営幹部が活字離れをしているようではいけないのです。

自分が読んだ本の話をする

 そこで、まず社長自身が新聞や本を読み、幹部の前でその内容の話をすることを提案します。
 例えば「今朝の日経新聞に書かれていた産学連携については、当社としても検討しなければならない時期にきていると思うのだが、どうかね」というように投げかければ、「いや、私は読んでおりませんので…」というわけにいかなくなります。否が応でも、毎朝、新聞に目を通すようになります。
 あるいは、「最近出版されたコーチングの本を読んだのだが、わが社の人材育成のあり方を考えるうえで役に立つ内容だったので、ぜひ読んでもらいたい。そして、今度の経営会議後の会食のときに感想や意見を一言ずつ聞かせてもらいたいと思うのだが…」などと、読んだ本の話題を経営幹部に投げかけていくことも推奨します。
 初めのうちは、「社長、最近どうかしたのかな。急に自分が読んだ新聞や本を話題にするようになって。おかげで読みたくもない新聞や本まで読まざるを得なくなり、休日もおちおち休んでいられないよ」といった陰口が聞こえてくるかも知れません。
 しかし1ヵ月も立つ頃には、「商談先で話につまることがなくなった」「『仕事以外の知識も豊富なんですね』と部下から尊敬されてしまったよ」といった経営幹部の声が聞こえてくるはずです。
 そして、「社長は自分が読んだ新聞や本を話題にして、われわれにも読ませようとしたのはこういうことだったのか。さすがだ」と感謝されるかもしれません。また「社長、○○に××××について書いてありましたが、それを参考にわが社でも検討していきませんか」といった提案を、経営幹部や管理職がしてくることも考えられます。
 こうなればしめたもので、社長が新聞や本の話題を常に投げかけなくてもよくなります。
 とはいえ「近々、昼食でもとりながら、○○○に書かれていた×××××について意見を聞きたいと思っているので、予定に入れておいてほしい」などと、時おり声をかけることは忘れないでください。

提供:株式会社TKC(2002年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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